第67話 異世界に戻って来てから
「さて、店に仕入れた荷物を置いたら伯爵様に連絡入れないと、ジェラルド、鳩を借りていいかな?」
「ああ」
卵を収穫した後は俺達はダチョウに似たルルエに乗った。
俺達は夏の濃い緑の中を、ミレナが連れて来てくれた不思議な動物の背に乗って移動する。
木々の多い森の中では走れなかったけど、森を抜けた後は障害物が減るので、真っ青な空の下を駆けた。
土の上、草の上を爽快に。
ラッキーも元気よく走って俺達についてきた。
入道雲が綺麗だなぁ、などと思いつつ家に帰った。
まずルルエ達をミレナの作った立派な竹製の小屋に入れた。
「今更ながら聴くけどミレナはなんでわざわざ竹、バンブーで作ったんだ? レンガとかもあっただろうに」
「バンブーの方が問題があればすぐに壊せるでしょ」
「な、なるほど」
しかしどのみち、こんな力作を壊すのはしのびないな。
小屋の壁は竹なのだが、モザイクのような色が違う組み方すらされていた。
オシャレだ。
しばし小屋に見惚れていた俺だったが、その後は店に移動し、どっさり仕入れた荷物を魔法のカバンから取り出した。
倉庫にティッシュとトイレットペーパーがみごとに積み上がった。
「ふー。こんなもんか。あ、ティッシュのいくつかはミレナの魔法のカバンに入れておいてくれ」
「分かったわ」
「俺のにも入れていいぞ、かなりの量だな」
「ありがとう、ジェラルドとにかくこれは嵩張るからさ」
店の棚に商品を陳列する作業の間にジェラルドに、伝書鳩を借りて伯爵様に連絡を入れた。
花粉症の件で錬金術師に会わないといけないからな。
程なくして伯爵様から返事があった。
「ちょうど明日に錬金術師に会う予定があるそうだから伯爵様に同行する事になった」
「じゃあまだ明日は開店できないわね」
「狐男もまだ来てないしな」
ジェラルドが狐男くんのそんな噂をすると、
「こんにちは! 俺が来ましたよ~!」
地図を手にした狐男くんが来たのだった。
チャラい。
「お疲れ様、とりあえず見てのとおり、今は開店準備中だ。ジェラルドからカフェでの仕事を聞いておいてくれ」
「商品並べるのは手伝わなくて大丈夫ですか?」
「君が手伝うのは主にカフェの方だから」
「分かりましたぁ~」
俺は魔法のカバンから冷たいペットボトルのオレンジジュースを出してジェラルドと狐男くんに渡した。
「ひとまずは二人でそれでも飲みながら説明を受けて」
「あざっす、了解です」
俺とミレナはまだ商品の陳列作業だ。
「ミレナの水分もここに措いておくからな、好きなのを飲むといい」
2階雑貨屋の店内にある丸いミニテーブルの上にコーラとサイダーとオレンジジュースを置いた。
ミレナは少し悩んでサイダーを飲んだ。
「はー、シュワシュワしてて爽やかだわ」
「今回仕入れた下着はこれだ、姉が選んでくれた」
魔法のカバンから下着類を出した。
鮮やかな花のレースの装飾が見事な商品達だ。
「ふーん、お姉さんがね。華やかなのが多いわね」
「よ、夜職の人が使うって言ったせいだろう」
「まあ、貴族の令嬢も華やかなのは好きだろうから問題ないでしょ」
しばらく陳列作業をしてから、お昼の時間だ。
一階に行ってランチタイム。
「何か食べたいものはあるかな?」
「私、お肉」
「別になんでもいい」
「俺は美味しいものがいいです」
美味しいもの、フワッとしてるな。
「じゃあひとまずはミートソースのパスタでも作るか」
出来合いのパスタソースにケチャップやにんにくを少し追加して炒めた玉ねぎとひき肉を混ぜて作る簡単パスタだ。
パスタソースで服が汚れないように紙のナプキンも渡しておいた。
「味がしっかりついてるな、美味だ」
「お肉が小さく細かいけど、これも美味しいわね」
「俺はこんなの始めて食べますが、美味しいですね!」
とりあえず好評でよかった。
ミレナとジェラルドはもうお箸を完璧に扱えてる。
狐男くんには箸は馴染みがないだろうと、フォークとスプーンを渡してる。
俺は狐男くんに食べ方を教える為に今回はあえてフォークとナイフを使っている。
俺達が食事をしている、間にもミラはせっせと小物商品の陳列作業をやっていた。
休んでいていいと言ったんだけどな。
俺の役にたちたいらしい。
なんと健気な。
食後に俺はミラにお土産のお人形とぬいぐるみをあげてみた。
ドールが自分より小さなお人形やぬいぐるみを抱えている。
「うーん、かわいいな!」
俺は思わずカメラでミラを撮影をした。
ちなみに球体関節のドールの方はまだジェラルドの賢者の家にホームステイ中だ。
そのうちあそこの魔力に反応してミラのように動くかどうか試している最中だ。
ちなみにミラの反応の方はお土産のお人形とぬいぐるみを手にして、まんざらでもないって顔をしていた。
「それでこっちが着替えの新品のドレスと中古の服は汚れてもいい普段着にすればいい、お外を散歩する時とかに中古のなら気兼ねなく着れるんじゃないかな」
俺は貧乏性なんで、ちょっと良い服も中古ならわりとすぐに使えるけど新品だともったいなくてなかなか下ろせないのだ。
なのでフリマサイトなどで買った中古服は助かる。
「ありがとうございます、トランクに入れて来ますね」
ミラは服を紙袋に入れてからラッキーの背中に紐でくくりつけて乗せ、俺の部屋に向かった。
嵩張る荷物の運搬に犬を使っている。賢い。
「凄いなぁ、本当に賢いし、動くお人形なんだ」
狐男くんがミラに感心している。
「ショータ、そろそろあの子のトランクにも服が入らなくなるわよ」
「衣装箪笥を買ってやらないとだなぁ」
「あ、私へのお土産は!?」
ミレナがハッとした顔をした。
「あ、ケーキがあるぞ、夜は花火もしよう」
「ケーキ! 甘いもの!」
ミレナの耳と尻尾が嬉しそうにピンッと立った。
かわいい動きだ。
家庭用の小さい花火も微笑ましくていいんじゃないか?
祖母の家に遊びに行った時の、田舎の夏みたいで。などと思った。
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