第44話 また完売

 ところでミレナも年配の女性相手なら親切に出来るようだな。

 やはりヘルプを頼むとしたら年配の女性がいいのかな。

 でも仕事がハードなら若くて体力があって記憶力の良いの人を呼びたいものだが。


 覚えることが多いんだよな、こちらの世界では馴染みのない商品があるから。


 とにもかくにも作り置き料理をがんばって、パンケーキとハンバーガーとフライドポテトをタッパーに入れ、それを魔法の鞄に続々とぶち込んだり、開店前の知識詰め込み教育などをして、また開店の日が来た。


 もうプレオープンは終わったのに悩み過ぎてまだ雑貨屋のヘルプはドールのミラだけだ。


 開店時には令嬢達の口コミでお客様が行列を作ってて焦った。

 整理券まで作って配った。


 コンドー◯を求めに来た花街の店の人まで来てしまった。


 看板息子? イケメンのジェラルドがカフェにておもてなしをするもんで女性達は色めき立つ。


「本日最初に来店された女性のお客様先着五名様には特別メニューの限定五品のエディブルフラワーの花束クレープをお出しできますが」


 俺は地球の動画サイトで見かけた見た目が最高に映えるクレープを地球でこっそり仕入れてきてる。



「じゃあそれを」

「「私も!」」

「わたくしも」

「いただくわ」」

「かしこまりました」


「まあ! なんて美しいのかしら!」

「これは本物のお花ですわね!?」

「ええ、全て食べられるお花です」


 ジェラルドが予習どおりに説明してくれる。



「中にあるクリームが甘くて美味しいですわ!」

「外側の薄い包みも柔らかくて美味しいわ」


「わたくしにはこのパンケーキというものを」

「かしこまりました」


「男でも食べられる甘くないものはないのか?」

「こちらのハンバーガーとポテトのセットがございます」

「俺にはハンバーガーセットなるものを」

「あ、それ私にも」



 騎士っぽい人も来てくれてる。

 伯爵家のじゃがいものおやつをあげた人だと思う。


「はい、ハンバーガーセットが二、入りました!」

「ハンバーガーセット二個了解!!」



 俺はジェラルドが注文をとってきてくれたものを厨房で用意する。

 ほとんどは魔法の鞄に作り置きがあるから皿に盛り付けたりするだけだけど、カフェも雑貨屋さんも大忙し。



「おお、こんなに美味しいものは今まで食べた事がないぞ!」

「これが、ハンバーガー……覚えた!」


 それ実はジャンクフードですよ、騎士様!

 でも好評でよかった!



 雑貨屋さんの方はミラにまで商品説明をさせるはめになったが、なんならミレナより地球の商品の知識があるみたいだった。

 コンドー◯の説明もできた。


 ゴムは夜職の人のみならず、なんか騎士達にも好評だった。

 けど、騎士団には女性少ないだろうが、もしや……。

 いや、深く考えないようにしよう。

 生より病気予防になるからいいよね!




「また雑貨屋の売り物が消えたんだけど! ティッシュも即完売だし!」

「ははは、月に一回しか開けない雑貨屋さんになってしまうな」

「笑ってる場合なの!?」


「カフェの方の材料はまだ何とかなるのか?」 


 ジェラルドもさすがにお疲れの様子ではあるが、

 そんな質問をしてきた。


「えーと、カフェはまだ三日くらいはもつかも」


 脳内で出せる料理の材料の量を思い出す俺。



「三日か……」

「雑貨屋さんの売り物がないから上は来月まで閉めて、ミレナにも下のカフェを臨時で手伝って貰いたいんだが」

「仕方ないわね」


 などと言いつつジト目で見てくるミレナ。


「や、休めるから、三日後くらいに」



 仕事終わりのご飯は、


「青鹿の焼き肉!」

「そう言えばまだ食べてなかったな」 


 角はボーンナイフの御守にしたけどな!


「ところで川で捕れたニョロニョロはいつ食べるの?」


 うなぎの事か。


「一匹を三人で分け合うと少なくなるから、あと二匹は明日市場で仕入れてから食べよう」


「ひとまず青鹿だ」

「こいつわりと淡白な味よ」

「この焼き肉のタレで食えば美味しくなるはず!」


「なるほど」

「いけるわね」

「そしてお待ちかね、冷えたビール!」



 俺は満を持して魔法の鞄から冷えたままの缶ビールを取り出した。



「それだ、それを待っていた」

「いいわね」



 ジェラルドもドワーフ程ではなくとも、案外お酒好きなエルフなんだなと、俺は思った。



「「「乾杯!」」」







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