第19話 街歩きと買い物
空を見上げたら、晴れ渡る青空が綺麗だった。
その日は絶好の洗濯日和だったのでコンドミニアムの庭で、俺は朝から洗濯をしてシャツやパンツを干してた。
昼近くになってまた庭に出たら、
ん? あれは……
「何故ミレナが干してたシャツを着てるんだ? それは俺のだぞ?」
「ちょ、ちょっと見慣れぬ素材の服だから着心地を知りたかっただけよ! 盗むとかじゃないから!」
がっつり俺のTシャツを着てる。
「で、そのシャツの感想は?」
「驚くほどサラサラでスルスルで柔らかいの!
全くガサガサごわつきもなくて!」
「乾くのが早い特別なシャツだよ。今度無事故郷に戻れたら、お土産に似た性能のTシャツ一枚くらい買って来てやるから、ソレは返すんだぞ、まだ着替えが少ないから」
お土産をくれると分かって瞳を輝かすミレナ。
「わ、分かってるわよ!」
こいつは外で着替えたんだろうか?
素肌に直接着てるように見えるが、まさかな?
俺はとりあえずミレナが着替えられるようにすぐに室内に戻った。
昼になったので食事に行こう。
ジェラルドは冒険者ギルドの仕事に行ってて、夜まで戻らないらしいから簡単に済まそう。
屋台の串焼きとかでいいや。
俺はリュックを背負って外に出た。
ミレナは着替え終わっていたし、シャツはまたロープに干してあった。
「どこに行くの? 今から昼食を作るんじゃないの?」
「食材の買い足しもあるから、昼は簡単に屋台飯でもと思ってる」
「なんだ、あなたが作らないの」
しょんぼりするミレナ。
「夜は作るからそうガッカリするな」
「じゃあ私も外で食べる」
俺が外に行くとミレナはついてきた。
海辺の屋台ゾーンにイカの串焼きがあったのでそれを購入したら、ミレナも自分の金で同じように購入してた。
払ってやるべきか悩んだが、口説こうとしてると勘違いされても困るから、ここはあえてスルー。
すまんな。
富豪になったら気軽に奢ってもいいけど。
イカ焼きはシンプルな塩味でも美味しかった。
多分新鮮なんだろう。
スープの屋台もある。
その場で食べて器は返却か。
よしと、俺は店主に声をかけた。
「貝汁一つください」
「あいよ」
俺は貝の出汁がよく出てる貝汁を食べてみた。
うん、美味いな。
特別な調味料がなくとも海鮮の出汁が効いてる。
ミレナは隣の屋台でソーセージを買ったと思ったら、小走りで駆けてきた。
ソーセージをひと口あげるから、そのスープをひと口だけ飲ませて! などと言う。
節約か?
「別にいいけど、ふつうに頼めばいいのに」
「貝は食べたくないけど、汁だけ好きなの!」
「ああ、貝の本体は好きじゃないが出汁が好きなんだな、俺の姉貴と似てる」
俺はそれで納得がいって貝汁を飲ませてやった。
ミレナは美味しそうに飲んだ。
貝はやはり食べなかったようだ。
でもミレナの買ったソーセージをひと口貰うのは遠慮した。
おじさんなので、気がひける。
俺が女子高生とかなら多分貰ってたけど。
「お前はソロで冒険者やってるなら、先日は何をしてたんだ?」
「海蛇を捕まえて売ったわ」
「蛇を! 怖くないのか?」
「あまり大きくはないから怖がるほどではないわ。でも薬になる蛇なの」
「へー、海辺かぁ、貝とかワカメのような海藻はなかったか?」
「海藻も貝も取ったけど全部海辺の商店に売ったわ」
「それを持ってきてくれたら俺が料理できたぞ!?」
「そのあとギルドに蛇を納品するんだから嵩張るものはちゃちゃっと売ったわ」
「ああ……あれ、荷物が沢山入る魔法の鞄、ミレナは持ってないのか?」
冒険者の必需品かと思ったが金貨もいる高級品だから買ってない?
「今までは……パーティの男が勝手に荷物を持ってくれてたから、そういうの買ってなかった」
「そ、そうか」
なるほどな!
男が荷物持ちになってくれてたんだ。
「そういや冒険者にポーターっていう荷物持ちの仕事があるんだったか?」
「ポーターは別に雇ってなかったわ、たいていリーダー格が魔法の収納鞄の類をもっていたから。
よほどの田舎で魔法の鞄も持たない地域でなら、その仕事も成立するかもしれないけど」
そうか、荷物持ちの仕事は都会じゃ成立しないか。
金を出せば魔法の鞄が手に入るならそれもそうか。
俺たちは海鮮を売ってる店に来た。
タコとエビを買って、次に八百屋でブロッコリーとレタスを買った。
「それで何を作るの?」
「今考えてるのはサラダだけど」
「ふーん」
女の子なのにサラダにはあまり興味がないのか?
まあ、スイーツや肉ほどテンションは上がらないか。
あ、レモンも買おう。
しばらく屋台で立ち食いや買い物を楽しんだ。
ミレナはその間、コガモのように俺についてきていた。
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