第10話 精霊祭
「テイマーの家に直接行こうかと伝書鳩を送ったけど、あちらの申し出で大樹の村の精霊祭で会おうと言う事になったから、祭りに行くぞ、ショータ」
お祭りがあるのか!
てか、いつの間に伝書鳩を!?
送る瞬間を見逃した!
ちょっと、いや、かなり見栄えした気がするのに!
「分かった! お祭りも楽しみだな」
「ちなみに祭りは夜からだ、満月が綺麗に出てるはず。それと、もし祭りではぐれたら大樹の側で待ち合わせな」
「了解!待ち合わせは大樹の側!」
祭りの会場は最初に俺が異世界へ来たきっかけの大樹のある場所で、精霊祭という祭りらしい。
日が暮れた。
しかしそこかしこに篝火などの照明はある。
それに確かに今夜は綺麗な満月が出てるし、オーブのような丸い光がそのへんを漂っている!
これがもしや精霊なのか?
「なあ、ジェラルド、なんかこの浮遊してる光は精霊だったりするのか?」
「ああ、そうだ。こっちが攻撃しなきゃ無害だ」
やっぱりこれが精霊なんだ!
ファンタジック!
大樹の村には沢山の人が集まっていた。
広場は祭りの装飾がほどこされ、楽師も来ていて、楽しげにダンスをしてたりする。
出店も並んでる。
にぎやかで大変結構。
鰻売り場の側に待ち合わせたと聞いて、鰻売りの出店の側に来たら、でかいタライの中で鰻がうねうねしてた。
おお!
まだ生きてる、生体を売り、買って帰って自分で捌けってことか。
蒲焼が食べたいな。
などと思いつつ眺めていたら、そこにテイマーさんがモフモフな狐を連れて来てくれた!
テイマーさんは二十代後半くらいの見かけの赤い髪の男性で、二十代半ばくらいの妹さんも一緒に来てた。
こちらも流石兄弟、やはり赤い髪だ。
「シルバーフォックスだ」
「うわ~尻尾が三つもあるモフモフだー!
本当に触ってもいいんですか!?」
「ああ、構わんさ、こいつは賢いから噛まないよ」
早速銀色の美しい毛並みのモフモフした尻尾を触らせてもらう。
ふわっとした柔らかい感触が手のひらに伝わった。
優しく揉んだ、モフンモフンと。
「んあー、至福」
ついでに尻尾に頬擦りした。
「そ、そこまで好きなのか、尻尾が」
モフモフを堪能しまくってるとテイマーさんに若干引かれた。
「あはは! これでシルバーフォックスに何か美味しいおやつでも買ってあげてください」
猫にとってのチュー◯的な何かを。
俺は銀貨を一枚出したが、多いよ、おやつなら銅貨三枚でいいと言われて銅貨三枚渡した。
「今日は少し暑いわね」
「そうか」
テイマーの妹さんがジェラルドに色目を使ってる。誘惑してるのか、上着を脱いだ!
だが、ジェラルドは一言エールを買ってくると言って買いに行ってしまった、赤髪さんを置いて。
「あん! 待ってよ! ジェラルドさんったら!」
ここはテイマーの妹さんの邪魔をしないようにジェラルドから一旦離れるべきなのかな?
それともジェラルドを助けるべきか。
……別に俺の助けなどいらないか。
俺は屋台で苺飴を売っているのを見つけ、それを購入した。
べ、別におじさんが苺飴を食ってもいいよな!?
地球と同じようなものを売ってて嬉しかっただけだし!
そんで祭りだし、棒もついてるから立ち食いでもいいよな、皆そこらで食ってるし。
よし、食おう!
……甘い飴とやや甘酸っぱい苺とのマッチング。
普通に美味しい。
この世界で生きる人たちがお祭りで生き生きとしてるのを眺めつつ、なんとなく大樹の側に行き、大木の幹にもたれた。
すると、するんと体が後ろにすり抜けた!
ええ!?
俺は自宅の、元の世界の押し入れに戻った!
戻ってこれた!!
ドキドキと心臓の鼓動が五月蝿い。
まさか、戻れるとは!
俺は手に持っていた食いかけの苺飴を台所にある皿を出して、それに置いてから冷蔵庫に突っ込んだ。
そして壁につるしてたハエたたきを手にした。
そして、押し入れに戻り、押し入れの壁側からハエたたきを出し入れした。
今あちら側からは幹からハエたたきがにょきっと出てる変な光景になっていることだろう。
「もしかして特定の条件下、俺だけ行き来が自由ってことか!? 大樹と押し入れ経由で?」
こちらからはいつでも行けるけどあちらから戻るには魔力のチャージタイムが必要とかなのかな?
今夜は精霊祭で魔力に満ちていたから戻れたとか、そういうやつ?
そう言えば前回は気が付かなかったが、もしかして満月の日だったのかな?
戻るか?
おそらくは、俺は特定の条件下で行き来ができる!
まだあちらのセイ……なんとかという、ヴェネチアっぽいとこも見てないし、お世話になったジェラルドにもっと地球の美味しいものとか食わせてやりたい。
俺は原付バイクでコンビニに行ってATMで金を降ろして酒とつまみと鰻のタレとカレールーと米とアイスとプリンを買った。
ひとまず冷蔵庫や、冷凍庫に入れて、急いで風呂に入った。
お湯の出るシャワーが心地よい。
流石日本だ! 便利だぜ!
髪を乾かしてから、冷蔵庫に入れていた先程の食材達をクーラーボックスに保冷剤と一緒に入れた。
戻ってみよう。
俺はクーラーボックスを引っ提げてまた押し入れから異世界へと向かった。
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