第5話 第二回デスゲームスタート

 前回のデスゲームで生き残った男を呼び戻して、次のターゲットのもとへ移動を開始する。


 もちろん、今回も場所はダンジョンだ。


 まあ、いきなり外でやったら収拾つかないからな。


 それじゃあ、復讐もクソもない。


「なあ、こんなところに連れてきてなんだってんだよ。俺は何も言ってねぇよ?」


「それは知ってる。そのチョーカーがあるから、お前が何をしてたかはだいたい把握してる」


 どうやらコイツは、俺の居たパーティと同じ組織の、同じ支部の奴だったらしく、色々と報告していた。


 だが、俺やデスゲームについての情報は流していないため、情報が漏れた心配はない。


 しかし、俺の元パーティメンバーが、コイツの仲間が死んだ報告を耳にしたらしく、少しは怖がってくれてるみたいだ。


 ひとまずよしとしよう。


「さて、ここだな」


「なあジン。今回ワタシは先導していないが、どうしてわかった?」


「ここのダンジョンだけなら、もう俺の支配下だ」


「ほう? 流石だな」


「ま、他のダンジョンじゃあこうはいかない。それに、俺だけの力じゃなく、高まる力のおかげだからな。神に感謝感謝だ」


:感謝されるとは。しかし、神として当然の事をしたまで

:だが、人間がスキルを常時発動し、ダンジョン一つ支配できる程のものだったか?

:ただの人間ではないという事だろう


 ただの人間じゃないかもしれないが、俺に、才能なんてものはない。才能があれば、家族を殺されずに済んだはずだ。


 今回のことは、やったらできた。それだけだ。


 まあ、おかげで、仮想の魔物をダンジョンに配置して、探索者の位置を固定しながら把握する事が可能になった。


 今のところ、ダンジョンを支配下に置いてから、このダンジョンの魔物の被害はゼロだ。


「なあ、さっきから何言ってんだよぉ。これから何するんだよぉ」


「あれ見ろあれ」


「あれ?」


 俺がアゴで先を示すと、男は、怯えた様子で視線を向けた。


「オラァ! オラァ! はっはっは! いいザマだな!」


「魔物の分際で、人間様に刃向かおうっての?」


「何もしてないのに、やめてよ」


「おいおい。魔物の癖に助けを乞うのか? いいねいいね。もっとやってみろよ」


「やめ」


「まあ、助けてやんねぇけどなぁ! あっははははは!」


 普通に見れば、無惨にも魔物を狩る探索者達に見える。


 だが、俺からすれば、何もない場所で空気を殴ってるだけの滑稽な図だ。


 ランダムな反応を本物と捉えて、魔物を攻撃し、得られた素材も錯覚にすぎない。


 そのうえ、彼らはその事実を自覚できない。


 これで満足なら、どうして本物の魔物を攻撃してしまうのか……。


「お、おい。あそこにいるのって、グリムフェザーの人達じゃないか?」


「なんだ? 詳しいのか?」


「詳しいなんてもんじゃないだろ。探索者をやってたら誰だって知ってるパーティじゃないか。リーダーのフワ・タカラシさん。副リーダーのエイワダ・カノンさん。それだけじゃない。バックアップも含めた六人全員。フルメンバーじゃないか。メディアに出てる時は、もっといい人そうだったのに……」


「へー。ま、これが人間の本性。現実だよ。わかったか? トバオくん」


「これが、本性だって? そんな訳」


「おいおい。今、目の前で繰り広げられてる現実を、見て見ぬ振りしようってのか? これが現実じゃない訳ないだろう」


「……」


 ようやくトバオも現実を認めたらしい。


 さっさと認めちゃった方が楽だからな。


 まあ、俺のスキルに、残虐性を増す効果でもあれば話は別だが、そんなものはないので、あれは彼らの素の性格だ。


 おっそろしい。


「じゃ、現実を見たところで、行ってこい」


「イッテコイ……?」


「なに馬鹿みたいな顔してんだよ。あそこに行けって言ってんの」


「おい。あんな奴らの中に行けって。まさか、俺があいつらの中に混ざった状態で、またデスゲームをやるってのか?」


「そういう事。さ、早く行け」


 軽く背中を押してやると、トバオは、まるでトラックにでも轢かれたように、盛大に吹っ飛んで見せた。


 そんな演技しなくていいのに……。


「うっ」


「なんだ? 誰だ?」


「あ、あのー……」


「チッ。格下が、おこぼれにあずかろうってか? ハイエナみたいな真似はやめろよな。気色悪い」


「いや、そうじゃなくてですね」


「ねえ、探索者として見た事ないし、この人一般人なんじゃない?」


「確かに、そうか。ミスったな」


「はーあ。結構深くまで来てたのに、一般人と遭遇するなんて、サイアク。ちょっと待ってて、今片付けるから」


「仕方ねぇ。営業スマイルだ。待っててくれよ」


「いや、ですから」


 アイツじゃ駄目だな。全く相手にされてない。


 デスゲームを始めるなら、やっぱりぬいぐるみとかじゃないと駄目なのか。


 仕方ない。俺が出るしかないな。


「お兄さんたち」


「あん? おや。お嬢ちゃん。迷子か? 危ないから待っててね」


 トバオというクッションがあったからか、もしくはロリコンなのか、俺に対する当たりがいい。


 ま、それはなんの関係もないが。


「ベー!」


「ははっ。元気だな……。なんだこれ、首輪。こいつ、魔物か!」


「ちょっと違うな。俺は通りすがりのデスゲームのゲームマスター。そこの男を含めて、お前らにデスゲームをやってもらう」


「リーダー。スキルなら倒すに限るっす。うおおおおおおおおおおお!?」


 脳筋が突っ込んできて鉄柱に貫かれた。


「は?」


「嘘、何が起きたの?」


「ああ……。始まった……。始まっちゃった……」


「説明中に攻撃しちゃ駄目じゃん。悪い子にはペナルティだよ」


「……」


「まあ、もう聞こえてないみたいだけど。他の奴らもおんなじだからな? これはデスゲーム。お前らが仲間に手をかけ、誰が殺したかを当てるデスゲームだ。俺を狙おうなんて思わない事だな。わかったか?」


「ひっ……」


 今回は人が六人も残ってるからな。ペナルティに意味があった。


 怯えに疑心暗鬼。効果てきめんじゃないか。


 そうそう。デスゲームはこうでなくっちゃ。

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