第53話 清々しい朝

うーん清々しい。


和樹は爽やかな気持ちでロビーで一人でコーヒーを飲んでいた。やはり好きな相手と抱き合うのは気持ちがよかった。一体何年ぶりだろう。和興時代に多少は女性を抱く事もあったが、和樹になってからは初めてだった。半世紀ぶりくらいだろうか。


悠里は起こさなかった。過去の経緯から、自分が本当に本気で女性を抱けば、相手がどうなるかを知っていた。余韻というか疲労というか。とにかく今はそっとしておいたほうがいい。そのほうが多少なりとも着床率も上がる気がするし。


──いやでも相性よかったな

和樹は爽やかな微笑みを浮かべつつ悠里との逢瀬を思い返していた。いくら紳士的でも、神の子の末裔といえど、和樹だって立派な男である。女性を求める本能は変わらない。そして過去の女性と比べても相当に相性がよかったのだ。大満足である。


──正直しばらく妊娠してほしくないな

和樹がそう思うのも珍しい。もちろん最終的には子供を産んでほしいが、もう少しこの逢瀬を愉しみたかった。いや悠里をもっと悦ばせたかった。和樹がそう思うくらい悠里の反応は良く、また和樹も深い満足感を味わったのだ。


ふとあることを思い出して手を上げてコンシュルジュを呼んだ。


「おはようございます」

コンシュルジュは礼儀正しく微笑を浮かべてそう挨拶してきた。


「おはよう。ひとつ頼みが」

和樹は挨拶を返しつつ頼み事を言った。


「はい」

コンシュルジュも笑顔で応える。


「サンドウィッチを10人前とペットボトルの水を1ケースくらい部屋に運んでおいて欲しい。サンドウィッチには透明な蓋をしてサイドテーブルに置いてくれ。悠里が寝ているけど彼女は起こさないようにしてね。まあ多分多少の事じゃ起きないけど」

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