五章 交際開始
第20話 交際だか契約だか
「そういえばお弁当って自分で作ってるの?」
兵藤は何事もなくそう訊いてきた。
「おかずはお母さんだけどね」
ご飯とかを盛り付けるだけだ。
「お母さん朝いそがしいの?」
兵藤は不思議そうにそう訊いてきた。
「夜遅いからほとんど昼まで寝てるみたい」
悠里の母未希子は芸能プロダクションのマネージャーとして働いている。お金には困っていないのでステージママとしての生きがい的な動機でだが。
「それじゃ加藤さんも大変だね」
そういって兵藤は少し考えて言葉を続けた。
「加藤さんじゃちょっと他人行儀だね。二人の時は悠里でいい?」
オイオイもう彼氏面かよ。と思いつつ頬が熱くなる悠里であった。
「べつにいいよ」
ヤバちょっと棒だった。
「やっぱり加藤さんは真面目だね」
兵藤はたった今自分で宣言した事を忘れて悠里を加藤さんと呼んだ。
「悠里って呼ぶんじゃなかったっけ?」
悠里がちょっとからかうようにそう言うと
「やっぱり少し恥ずかしかった」
兵藤ははにかむような笑顔を浮かべてそう言った。
「かわいいやつめ」
悠里はそう言って少し上から目線で余裕を見せつけるように笑った。
そういえば別に付き合うのにOKしたわけじゃないんだけどな。まあ言われた翌日にまたここに来てるんだからOKという事でも別にいいんだけど。でもそうなるとやはりアレの事が気になる。
「センセ、昨日いってたこと本気?」
悠里はダブルストロベリーフラペチーノとかいう訳のわからないイチゴミルクみたいなパックジュースをストローで飲みつつそう訊いた。
「どの部分のことだろう?全部本気だよ?」
兵藤は相変わらずあっさり言った。
「……私が妊娠したら大変じゃん」
悠里は常識的な事を言った。教師が生徒に手を出すなんて今時すぐにTVやネットで炎上する。ましてや元子役が在学中に懐妊なんてどうなることか。
「ああそれは大丈夫」
兵藤はあっさりそういった。
「例の催眠術みたいのでそういう認識をさせないようにできるから」
うわあ便利。
「……それにそんなにすぐ妊娠しないと思うよ」
兵藤は口をへの字にしてそう言った。
「そうなんだ」
悠里は性的な話にはあまり耐性が高くないが、これは言わば保健体育とか将来設計のような話なのであまり恥ずかしがらずに会話ができた。
「あともし子供産んでも生活大丈夫なの?」
なんか自分が姑みたいになったような気分だが大事な事である。
「お金は大丈夫」
兵藤はこれもあっさり言った。
「僕視点の問題は君が僕を受け入れてくれるかだけだよ」
最終的に子供ができるかできないかはもう運とか巡りの問題だと言った。
「なんか契約でもしてるみたいな気になってきた」
まあ言い出しっぺは自分なのだが。
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