神の子たちの生存戦略

@samayouyoroi

第一編 

序章

第1話 彼ら

厳密に言うと彼らは神の子ではない。まず大前提として、我々が考える「神」などというものは存在しないからだ。ただし彼らは、我々人類が想像するものとは違う形の超越者の力を受け継いでいる事は間違いない。受け継いでいるというか、その極一部がたまたま残っただけというか。


判りやすくいうと彼らは、その超越者を「神」とした時、その写し身たる「天使」が、実験として生み出した生命の、さらにその末裔たちの庶子に当たる。つまり神とはほぼ関係ないし、その力も微々たるものである。


しかし、ほぼ均一の頭脳と能力を持つホモ・サピエンスの中にあっては、やはり彼らは多少なりとも突出した存在である事は確かであった。


かと言って彼らはその力を使って地上統一だの世界征服だのはしない。というよりできない。彼らの祖先、最初の実験体たる者たちに与えられた使命は、あくまで文明の誘導者ないし支援者である。その種の使命により彼らはそういう事をできない。


そして彼らの存在意義は既にほぼ失われていた。ホモ・サピエンスはまあまあ標準的な、想定程度の文明を得たが、それ以上の進化は見込めず、観察対象としての価値も平凡なまま、後はまあ好きにおやりなさい、というような評価に落ち着いている。


とはいえ現実に地上の一種族である彼らには帰るところなどなく、もちろんホモ・サピエンスを支配しようという考えもなく、地上に存在するちょっと変わった一種族として、ごく普通に個体保持と子孫繁栄に勤しむのであった。

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