虐められてる子を助けたら俺が標的になったけど、何故が学校一美人の生徒会長が俺に構ってくる
蜂谷
第1話 カツアゲ
「おら、動くんじゃねえよ!的だろうが」
「お前が避けたせいで100点取れなかったじゃねえか! このクソが!」
そういう上級生にお腹を思いっきり蹴られる。
俺は思わず蹲った。
「早く立てよ!続行できねえだろが」
立ち上がれない俺を何度も何度も蹴ってくる。
よろよろと立ち上がると、地獄の時間がまた始まった。
今の俺は校舎の裏で壁を背にして半裸の状態になっている。
俺の腹の真ん中にはアーチェリーの的のように、中心から100、50、30と書かれている。
俺を的にした的投げだ。外れたら0点。
球は軟球とはいえ野球のボールだ。
それをあいつらは思いっきり投げてくる。
「あ、顔面入った! ボーナス50点な」
「避けろよぉ! 使えねぇなほんと」
男の拳が俺の顔面に入り、俺は吹き飛ばされる。
正直もう立つのもやっとだが、立ち上がらないとこれ以上ひどいことをされるかもしれない。
俺は怯えながら必死に立ち上がり、また壁の前に立つ。
ああ、どうしてこんなことになってしまったんだろう。
俺はぶつかってくるボールを全身に食らいながら、取り返しのつかない過去を思い出していた。
◇◆◇◆
俺は中村雄太、どこにでもいる中学校一年生だ。
公立の小学校からそのまま公立の中学校に入った。
小学校は楽しかった。仲のいい友達もたくさんいたし、勉強も運動も目一杯楽しんだ。
中学校になると、別の学区の小学校からも人が入ってくる。
俺は新しい出会いに目を輝かせながら中学校の門を跨いだ。
入学式は緊張した。
生徒会長が式辞を行い、皆に拍手される中、入学式は終わった。
「生徒会長綺麗だったねー」
「才色兼備って感じ、二年生なのになんかすごっく大人っぽいよね」
「私達も二年生になればあれくらいになるかな」
「アンタじゃ無理でしょ」
「なにをー」
クラスの女子が楽しそうに会話をしている。
確かに綺麗な人だった。真面目っぽい感じで、俺とは縁のなさそうな人だなって思った。
そもそも一年生と二年生が会うことなんてほとんどない。
運動会の縦割りくらいか?
そんな事を考えながらふと、窓から見える校舎の裏を覗くと、不良っぽい格好のした人達が座り込んでいた。
不良。
話には聞いていたし、小学校の頃から見かけることはあったけど、実際同じ学校にいるとなるととても怖かった。
俺は別に身長が高いわけでも体格がいいわけでもない。
絡まれたら逃げる、逃げれるかな。
関わらないようにするのが最善だろう。
その時はそう思っていた。
中学校に入学して一ヶ月くらい、新しい友達ともうまくいって、楽しい学校生活を送っていた。
そんなとき、放課後、一人の友達が暗い表情をしているのが気になった。
俺はつい声を掛けた。
「どうしたの、啓二なんか顔色悪いけど何かあった?」
「……ううん、なんでもないよ、ちょっと体調悪いかも。今日は先に帰るね」
そういった彼は俺達を置いて一人下校していった。
この時、俺はどうするのが正解だったのか、今でも分からない。
でも何か胸騒ぎがして、啓二が帰るのを遅れて後ろからつけていった。
体調が悪いなら、どこかで倒れたりしたらまずいだろうし、一緒に帰った方が安全だろう。
そう思って下駄箱から靴を取り出し、帰ろうとしている啓二に声を掛けようとした。
そこに入学式で見た不良が彼に駆け寄り、そのまま校舎の裏へと連れていかれていった。
体調が悪いって言ったのに、しかも不良と? 何か嫌な予感がして俺はその後についていった。
そこで見たのは、財布からお金を取り出し、不良の上級生にお金を渡す啓二の姿だった。
カツアゲだ。
今どき本当にそんなことするやつがいるのか、俺は怒りと恐怖が混ざったままの感情でその場から動けなかった。
不良たちが動くのを見て、俺は急いでその場から離れ不良が通り過ぎるのをやり過ごす。
そして未だ校舎裏にいる啓二に駆け寄り、事情を聞く。
「啓二!大丈夫か? どうしてカツアゲなんてされてるんだよ」
「わかんない、どこから聞いたか分からないけどうちって結構お金持ちなんだ。だから親の財布から盗んで来いって、そうしないとこれをもっとつけるぞって……」
そういって啓二は腕を見せてきた。
そこにはうっすらだが焼け焦げたような跡、たばこの残りを押し付けられたような感じだった。
幸い、そこまで強くつけられたものではなく、しばらくすれば治るような傷だった。
でも啓二の心に強くつけられた傷はそう簡単に癒えるものではない。
今もがくがくと震えてる啓二に俺は激しい怒りで頭が真っ白になった。
まだ近くにあいつらがいる。
ならまだ間にあう。
「待ってろ啓二、今取り戻してやるよ」
「え、いいよ、大丈夫だよ、お金さえあげれば、僕は無事なんだし……」
「何言ってんだよ、このままじゃアイツら一生つけあがるぞ」
「でも……」
俺は煮え切らない啓二を無視して走り出した。
さっきすれ違ったのだ、まだ学校からそう離れていない。
学校の門を抜け、下校で賑わう学生たちの中に不良たちの姿があった。
俺は駆け出して、四人組の後ろからケリを入れる。
「いてえ!」
「なんだなんだ」
「一年生かお前?」
俺の突然の攻撃に混乱している不良達に続けざまにケリを入れながら叫ぶ。
「啓二の金を! 返せよ!」
「はあ?何言ってんだお前」
「うっせーな、ちょっとあっち連れてくぞ」
俺は残りの三人に捕まえられ、学校の通学路から少し離れた公園に連れていかれた。
近くには誰もいない。
俺は急に怖くなってきた。
なんで俺はこんな無茶をしてしまったんだ。
四人もしかも上級生を相手にして勝てるわけがないじゃないか。
そんな俺の心を悟られないように、俺は強気に出る。
「さっき一年生からカツアゲしてたろ。そのお金を返せよ」
不良達が俺を囲むようにして見てくる。
その顔はニヤニヤと笑っている。
「あー見られちゃったか」
「いい金ズルだったんだけどなあ」
「面倒くせえな、こいつ締めといて黙らすか」
「賛成~」
俺は身震いした。
怖い、逃げないと、俺の足はプルプルと震えていた。
「おいおい、あの威勢はどこにいったんだよ」
「びびってるじゃんこいつ」
「まあいいな、これ以上関わったらどうなるか、分かってるよな?」
「俺らの金ズル、そのままにしとけよ」
威嚇するように脅してくる不良達に俺は何も出来ずにその場に立ち尽くしていた。
そして去っていくやつらに安堵してしまった。
悔しい悔しい悔しい!!
俺は何の力もない! 啓二を救うことも出来ない。
そうだ、先生に相談しよう。
なんでこんな簡単なことが思い浮かばなかったんだろう。
俺には手に余る。
きっと事態は好転する。
俺はそのときそう思っていた。
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