彩心真優のモデルになった女の子のお話

 彩心真優のモデルになった女の子のお話


 裏話だが——。

 彩心真優はモデルになった女の子が存在する。彼女は高校時代の同級生だ。一度も同じクラスになることはなかったが、彼女の活躍を遠くから私は見守っていた。


 んでんで——。

 実は先日——高校を卒業してから、もう……数えるのはやめよう。数えたところで悲しくなるだけだから。

 私は彩心真優のモデルになった女の子に偶然出会った。これは何かの縁かもしれない。

 気持ち悪いと言われてもいいさ。

 もう自分の信念のために動け——!!

 そう思い立ち、私は彼女に駆け寄った。


「もしも人違いだったらごめんなさい。もしかして——〇〇さんですか?」と。


 すると、相手は目をギョロッとさせてきたよ。それもそうだよな……。

 だって、もう遥か昔のお話なんだし。


 ただね、一言だけ言わせてくれ。


 あの子は最高に今でも美しかったよ。

 雨が降る中、今日も傘を差して立っていたよ。待ち人が居るのか、スマホ片手に辺りをキョロキョロと確認していた。

 ベージュ色のニットブラウスは細い身体をより一層引き立て、ロングスカートのスリットから覗く白い肌にはドギマギしてしまった。

 学生時代の頃はまだ子供っぽい部分が残っていたが、今は美しい大人の女性って感じだった。

 私が追い求める大人のお姉さんだった。


 高校時代を思い出してしまったね。

 私は一度だけ彼女に傘を貸した記憶があるんだ。誰もが予想できないにわか雨。

 私と彼女は異なるクラスだったけど、時同じくして、文化祭の準備をしていたんだ。

 で、時刻はもう午後7時を廻った頃さ。

 私が校舎を出ると、彼女は生徒玄関前で立っていたのだ。二度見、三度見したのを今でも覚えてるよ。

 どうしたんだろうと思っていると。

 彼女は突如降り出した雨を見上げながら、静かに困惑気味な表情をしていたのである。

 美少女と少しでもお近づきになりたい。

 下心満載な私は彼女に傘を貸したのである。

 奇妙奇天烈な出会いで、後日私は彼女に自販機で飲み物を奢ってもらった。あの時のお礼だと言われてね。やべぇ、マジで泣きそ。

 青春時代を思い返して、ニタニタが……。


 彩心真優のモデルとなった人物は——。


 運動神経皆無な癖に図体だけは大きく、身長推定170前半はあると思う。

 野球大好きで、この日もとある球団を応援するために、球場へと足を運んでいたのだ。


 目が合った瞬間、私はすぐに気付いた。

 あ、あの子だと。私が恋した女の子だと。

 で、改めて過去の自分を慰めたよ。

 過去の自分が儚い恋心を抱いてもおかしくなかったなと。あんな可愛い子に恋しないほうがおかしいんだとね。本当に可愛かった。


 あぁ、忘れないで。この恋心を。

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