第25話

「ああもう!」

限界だ、限界!俺の無力さにヘドが出る!

焦った。あんなに突然苦しみだして……

心の中のモヤモヤが苦しい。

輝礼アキラ

たぶん、裕太さんに連絡を取ってただろう壽生ジュキが戻ってくる。

「二美子さんは?」

「取り敢えず落ち着いた。尚惟ショウイが側についてる」

「そか。光麗ミツリ先輩来るって」

「え?裕太さんじゃないの?」

「この状況で裕太さん動けないだろ?光麗先輩なら話も分かるし、裕太さんにもうまく伝えてくれるだろうし、光麗先輩に連絡した」

何だよ……壽生も尚惟も冷静に対応できて、ポンコツは俺だけかよ……。

「輝礼」

ホットコーヒーを手渡される。

「サンキュ」

椅子に座り、テント入り口を見る。

コーヒーの香りが不意に鼻をくすぐり、一口飲む。

「はあ……1日が長え……」

「だな、早く終わらせたいな」


ほんとだよ……こんなに俺は無力だと思い知らされたことはない。


「おい、アキラ!」

肩をぐっとつかまれる。

「しっかりしろよ!あの状況で何も出きることなんてないよ」

「壽生」

俺の頭ん中読んだのかよ……。

「そのあとが大事だと思うよ。俺たちしか二美子さんを守れない、今は」

そのあとか……。

深呼吸をする。何ができる?俺に……

「なあ、アキラ、何で二美子さん過呼吸起こしたんだ?」

「そんなの俺が知りたいわ。急に息苦しそうにしだして……」

あの時、どんなだったっけ……。

「あの症状が過呼吸だったら…なんかの強い緊張とかストレスが原因だろうな」

壽生の推察をもとにすると、二美子さんにストレスを与える事柄があったってことだから……

「だったらやっぱ雅人のことか…?」

前後を思い出してみる。

「けど、雅人のことなんて、俺、話してないけど……」

思い返しても雅人っていう名は出たが、その後どうだった?だって、そもそも雅人に会ったときですら二美子さんそこまでのパニックではなかったような……

「じゃあ、他に何か二美子さんが引っ掛かってる何かがあるってことか?」

俺の中で二美子さんと交わした話の流れを辿る。雅人の友だちの話をして……。

「ブレスの話から、琉太のことを話して……けどそこは、大丈夫だった」

リュウタの字まで説明してくれて、知ってたのか…と思ったんだよな。

「だから彼が双子でって話を……」


 あ


二美子さんが苦しそうに顔を歪めた表情がフィードバックされる。

「双子……」

「え?」

「二美子さん、琉太リュウタが双子だって話のあと反応した」

「え?な…なんで」

「わかんねえけど、思い返してみたらそこなんだよ。けど、変だよな。雅人が一番のストレスだろ?」

「だよな……。この反応って、だいたい驚いたわけじゃないんだろ?二美子さんに抑圧をかけた出来事があって、そのストレスが原因なんだよな。琉太が双子ってことで反応したとするなら……」

「そこにトラウマの元が……」

俺の言葉に壽生も俺自身も固まる。

「雅人と会った時よりでかい拒絶反応……」


会ってるのか?何かされた?どういう関わり?


「おい!二美ちゃんは?!」

光麗さんが飛び込んできた。急いできたのだろう。息が切れて、額に汗も光ってる。

俺は、俺のできることをする。

光麗ミツリ先輩、大事な話、聞いて」

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