第23話

今、9時40分?45分?

ああ……こういうのは多少のタイムラグがあるのだね。

左腕の時計を見て、目の前の集団に視線を送る。ステージ上のパフォーマンスに熱狂的に声を上げている。気温は昼間とは10度以上違うが、汗だくで音に乗っている。

本来ならこのバンドはそろそろ終わりの曲なのだが、盛り上がったからか、あと3曲あるそうだ。

「それも、またよし、ですね~」

盛り上がっている回りとは違って、高みの見物のような風体のこの男は、ステージに背を向けて自分たちのテントへと戻った。

「あれ、どうした琉太リュウタ

テントへ戻るとイライラした琉太がずっとスマホをいじっていた。

「信じらんねえ、雅人と連絡とれないんだよ」

「え、どっか行ったのか?」

「飯買ってくるって言ってから、全く連絡がない、帰ってこない」

「フェスを楽しんでるんじゃないのか?」

「それならいいけどさ……。あれ?凌平は会えたのかよ。言ってた友だちと」

「ああー……まだ。でも会えるんじゃね」

ニコッと笑って琉太を見る。

「そか。俺、やっぱりちょっと探して来ていい?やっぱ気になるし……」

「雅人か?」

「うん。いい?」

「いいよ。行ってこい」

「ありがと、凌平」

フェスステージの方に向いて走ってく同じ顔した双子の弟を見送る。

俺は、別にそうなるように仕向けているわけではないが、流れに逆らわないようにすると、いつも俺に有利に事は進んでいく。

「琉太は優しいからな……」

テント外に置いてある、さっきまで琉太が座っていたチェアーに腰かける。

「双子でこうも違うかね~」

空を見上げて微笑みを浮かべた。

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