第46話 エースの覚醒 その6

…………翌日、


「よし、じゃあ、試しにサファイヤ、やってみろよ」とエルウッドさん。


「わかりました。投擲よーい…………であ!!」


 私はそう言うと、『グランド デポ』で買ってきたゴムチューブと木材で作った大型のパチンコのような投石器(カタパルト)でガスボンベミサイルを発射した。


 カタパルトから打ち出されたガスボンベは、まっすぐモンスターに向かって飛んでいくと、ぶつかる直前にドーンと盛大に爆発した。


「おお、いいじゃんいいじゃん」とベイルさん。


「なかなかの精度だな」とノエルさん。


「マナの使い方もいい感じでしたよ」とナジームさん。


 ペットボトルロケットの応用で、ガスボンベを加工して、ロケットの形にしたおかげでか、ガスボンベロケットは目標のモンスターに向かって一直線で飛んで行った。


「よしっ、その調子でもう一発」


「はいっ!!」



 昨日の戦闘でフロア11のモンスターをあらかた倒してしまった私達は、生き残りのモンスターはもういないのか索敵しながらこのフロアを最終パトロール。


 すると、大物のモンスターはいなくなっていたのだが、探し回るとノーマルのゴーレムやコボルトなんかの小物のモンスターが何匹か見つかった。


 私はその駆除のため、皆さんのサポートを受けながら、カタパルトの練習をする。


 私のカタパルトはゴムパチンコのような形をしており、その両端を足で固定して真ん中に引っ掛けてあるゴムを引っ張りガスボンベや火炎瓶、そして鉄片の入った爆弾なんかを発射する。


 ペットボトルロケットのような射程距離はでないのだが、セットしてから発射までの時間がペットボトルロケットのそれよりも大分短いために戦闘中、数多く発射することが出来るのだ。


 そして……「どうですか?サファイヤさん、投擲したガスボンベのコントロールうまく出来ましたか?」と背中から声を掛けるナジームさん。


 実は今日はナジームさんが私の背中にぴったりと密着して、マナを使っての投擲したガスボンベのコントロールの仕方をマンツーマンで教えてくれてるのだ。


 どんな恰好かと言うと、ボブスレーのダンデムみたいな格好です。はわわわわ、ナジームさん近いですって。


 ナジームさんの体温が背中越しに伝わってくる。あーもー、なかなか集中できないよー!!


 それでも、何度も練習しているうちにだんだんとコツがつかめてきた。


「おお、なかなかやるじゃねーかサファイヤちゃん」とノエルさん。


「ありがとうございます」と私。


「じゃあ、次はこの爆弾にしてみますか?」と500ccのペットボトルをミサイル型に加工して羽を取り付けた簡易手りゅう弾(というか、ここまで来ると、簡易グレネードランチャーと言った方がいいのかもしれないが……)を発射させる。


 打ち出された爆弾はおおよそ80m先のモンスターの頭上で派手に爆発する。うわー、耳がキンキンする。これ、耳栓も買っておいた方がいいかなー。


「いやー、十分十分、これだけの精度と破壊力があったら十分戦力として計算できるわ」とご満悦のベイルさん。


 すると、「言っとくけど、あれ爆発させてるの全部俺なんだからな!!」と私の真横で「ファイヤ」を打ってガスボンベやら爆弾やらを爆発させてくれているエルウッドさん。


「そんなの言われなくても分かってますよー」と私。


「こういうの黙ってればかっこいいのになー」とノエルさん。


「ちげーねーや」と言ってガハガハ笑うベイルさん。


「はいはい、リーダーには感謝してますよ」とナジームさん。


 そして……「エルウッドさん、何かお荷物持ちましょうか?」とデポ吉君。


 どうやら、今の敵がこのフロアの最後の一匹だったみたいだ。



「じゃあ、このフロアのモンスターは倒し切りました。次はいよいよフロア12ですね」とナジームさん。


「おっし、じゃあ、みんな、くれぐれも油断はしないように」とエルウッドさん。


「「お前がな!!」」とベイルさんとノエルさん。


 さぁ、いよいよフロア12の扉を開く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る