第38話 デポ吉君 登場!! その2
「豚大(ぶただい)の方、ニンニク入れますか?」
「ニンニクマシマシ ヤサイマシマシ アブラマシマシ カラメで!!」と呪文を唱えるベイルさん。
あれれ、ベイルさんも魔法を唱えられたんですか?
「プチ郎の方、ニンニク入れますか?」
「すいません、全部少な目でおねがいします」と私。
すると店員さんが慣れた手つきで茹で野菜をモリモリ乗っけながらラーメンを作っていく。ここは『グランド デポ 東京幕張店 ラーメン 大二郎』
黄色い看板が目印の二郎系ラーメン屋さんのご親戚みたいです。
普通、ホームセンターのラーメン屋さんと言ったら昭和の香りがするラーメン「ぽっ〇」とか名古屋民のソウルフードのスガ〇キヤさんとかのチェーン店なんかが定番だと思うんですれど、流石は『グランド デポ』、テナント入れるお店選びも妥協が無い。
オープンと同時にガテン系のお兄さんたちが次から次へと店内に入ってくる『グランド デポ 東京幕張店 ラーメン 大二郎』。でも、いきなり「ギルティー!」とかいわないですよね。
そんなことを思っていたら「ドンッ!!」とまるで洗面器のようなラーメンがやって来ました豚の大……まあ、ベイルさんのやつなんですけどね。
「うっひょー」とベイルさんは嬉しい悲鳴を上げながら、背脂を混ぜ混ぜしながら野菜の山を食べ始めました。もりもり。
すると、「はい、プチ郎の方おまちー」と言って、それでも普通のラーメン屋さんの大盛と遜色のないラーメンが私の前に置かれたのです。
……ニ十分後、
「うーん、苦しー」と言いながら『グランド デポ』の店内をヨタヨタと歩く私。
「サファイヤちゃん、やるじゃん、てっきり残すかと思ったぜ」とあの量のラーメンと野菜、一体どこに消えたのですか?と至極ふつーな感じのベイルさん。
「いやー、麺を残したら『ギルティー』ですからねー。必死でしたよ」と私。
「違いねーなガハハハハ」とベイルさん。
お買い物に付き合っていただくお礼に「何かご飯奢りますよ」といったら、「俺、一度でいいから、二郎系のラーメンって奴を食べてみたいんだよ」とベイルさん。
実は先日、秘密基地でらーめんヨウチューバーの「ずるずるさん」の動画を見て以来ベイルさん、すっかりラーメンに興味を持ったみたいなんです。
最近では『グランド デポ』に来るたびに「ずるずるさんの」動画をダウンロードするのがルーティンになってるんですよ。
そんなわけで、「ずるずるさん」の動画の中で『グランド デポの大二郎』さんが出てきたのを見て、「サファイヤちゃん、今度『グランド デポ』行った時に行ってみたいんだけど、どうかな?」と。
もちろん私は二つ返事でオッケーしました。ずるずる。
そんなわけで、腹ごしらえも終え、お腹をポンポコリンにしながら、台車コーナーへと向かう私達。
すると、「なあ、サファイヤちゃん、この店三度目なんだけどさ、結構俺達みたいなあっち側の世界の格好をした客がちらほらいるよな」とベイルさん。
「あー、アレはですねー、コスプレです」と私。
「コスプレ!?!?」
「はい、一種の変装ごっこみたいなものですね」
「変装ごっこ?またなんで?」
「いやー、この『グランド デポ 東京幕張店』の近くに、とても有名なコスプレをする会場があるんですよ」
「コスプレの会場?また、なんで?」と腕を組んで首を傾げるベイルさん。
そんな話をしている最中にも、私達の後ろをまるでダンジョンパーティーの格好をした一団が通り過ぎている。おやおや、ずいぶんとまた本格的なことですこと。
「ほら、私達の世界にも仮装パーティーとかがあるじゃないですか?」
「ああ、貴族連中のやっているアレかー」とベイルさん。なにか思い当たることがあったのかな?
「ええ、こちらの世界では、貴族の人達だけじゃなくて平民の人達の間にもコスプレって名前で流行っているんですよ」
「なるほどねー、平和でいいなー、こっちの世界は」とまたまた、今度は江戸時代のお侍さんのような恰好をした一団が私達の近くを通っていった。
ちなみに今日のベイルさんの格好は、革のタンクトップに、ノエルさんの赤外線スコープを購入した際に一緒に通販で買った米軍放出品のコンバットパンツ。
流石は現役でアメリカ陸軍に採用されているものだけあって、とっても丈夫で頑丈です。ベイルさんの大のお気に入り。
もう、見るからにゲームの世界から飛び出してきた戦士みたいな格好です。
タンクトップの合間から見える筋肉量が半端ない。もう、肩に重機乗せてんのかいっ!!
そんな話をしているうちに、やって来ました『台車コーナー』……って、台車って、それだけでコーナーがあるんだ。知らんかった。まあ、正確には『台車 運搬車 キャリーコーナー』っていうんですけどね。
そんな様々な台車が置いてあるコーナーで、なんか面白い商品無いかなーと、いろいろと見たり触ったり転がしたりする私達。ゴロゴロ。
すると、はへー、台車の世界もいろいろと進化してるんですねー。恐るべきは台車の世界。
目がついたのは、電動アシスト台車。いわゆる、電動アシスト自転車と同じで、チョンと押すと機械が反応してコロコロ転がる。いやーん、便利ー、これ欲しいかもー。
あとは普通にアクセルとブレーキの付いた運搬車とか、面白いのは前輪がタイヤじゃなくてキャタピラの台車……商品の紹介には「どんな凸凹道でもスーイスイ」と。これならもしかして階段も登れるのかな?
すると、「なあ、サファイヤちゃん、お金に余裕があったら、これなんかいいんじゃないのか?」とベイルさんがお勧めしてくれたのは電動運搬車。
前輪も大きいし、これなら私でもダンジョン内を動かせる。でも7万円かー……荷物も増えちゃってるし、台車二台体制でダンジョンに行くってのもアリかなーなんて思っていたら……
「あれ、なんか、あっちの方に特設コーナーみたいのがあるぞ、サファイヤちゃん」とベイルさん。
「台車の特設コーナー!?」
こういったらあれだけど、台車に特設コーナーなんかがあるのかなー……なんて半信半疑な気持ちで私達は特設コーナーに向かっていったのです。
すると、その直後の事でした。
私が『デポ吉』君と運命の出会いを果たしたのは。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます