第34話 クォーターエルフの憂鬱 その3

https://kakuyomu.jp/users/t-aizawa1971/news/16817330664535882718

(コンパウンドボウのサンプル画像)


 ノエルさんが見つけたページは……「こ……コンパウンド……ボウですか?」


「うん、コンパウンドボウだって……なんかすごいね、コレ」とノエルさん。


 「コンパウンド」って私の中では磨き粉ってイメージだったのだが、ググッてみたらなるほど、『複合』とか『化合物』って意味なのね。『コンパウンドボウ』でさしずめ『複合弓』ってところか。


 そういって、まじまじと見て見ると、なんか、もう、その形からして禍々しいのだ。(なんかすみません)


 なんというか、その……プレラノドンの羽というか、死神の羽というか……骸骨でできた弓というのか……というわけで、その場でパッと調べたことなのだが、アーチェリーの弓には二種類あって、『リカーブボウ』という……まあ、私達が一般的にイメージしている『あの弓』の形をしたやつと、コンパウンドボウというなんていうか、真ん中のボティーの部分が、軽量化の為なのか、穴抜きされており、一番の特徴はその弦の両端が滑車になっているのだ。そして、なんでだろうか、弓の弦が三本ついている……えっ、えっ、えっ、どういうことですか?これ?


 そして一番のおどろきがその性能なのだ。


「最高射出速度が……さ、390キロ!!!!」


「そ、そうなんだよ、普通に俺の弓の倍のスピードなんだよ!!」と目を真ん丸にしてノエルさん。


「射程距離が……200m!!!」


「そ、そうなんだよ、俺よりも、射程距離が長いんだよ!!」と普通の人間に普通に負けてしまっててエルフとしての面目が立たないノエルさん。とりあえず「訳を聞こうじゃないか」と言った感じてめっちゃ納得がいってなさそう。


「んでもって……えっ……ねえねえ、ノエルさん、ここ見た?」


「んっ?どれどれ……」と見た個所が、最大飛距離。


「「せんにひゃくめーたー!!!」」


「えっ、飛距離が一キロ超えちゃってんの?ねえねえどういうこと!?!?」


「知らないよー、知らない、とりあえず動画見よ!!」ってところで時間になりました。ギャフン!!


 そんなわけで、すぐにリーダーのエルウッドさんに二人そろっての有給申請。


「また、『グランド デポ』行くのー!!二日連続でー!!ってか、俺の事、全然誘ってくれねーじゃーん!!」とブツブツと小姑のように文句を言われたのですが、「ちょっと、ノエルさんの弓がめっちゃ強力になるかもしれないのです」と言ったら不承不承と言った感じで有給を取らせていただきました。


 そもそもあんたが普通に買い物手伝ってくれてるんだったら、もっと頻繁に連れてってますよ!!

 

 まあ、その代りと言っちゃなんですけれど、タダでもらったスマホを渡して、オフラインでも出来る落ちゲーを教えてやったら「あと2~3日行っちゃっててもいいよー」と掌がクルっと回った我らのリーダー。

 大丈夫なんですか本当に、逆に心配になってきたわ。


 そんなわけで、翌日も『グランド デポ 東京幕張店』にやって来た我々なのでした。


 さすがに二日連続でフードコートってのも芸が無いので、今日はちょっと落ち着いた感じで「サバンナコーヒー」で、カフェオレ飲みながらクロワッサンでシャレおつにブレックファスト!


 すると、この『コンパウンドボウ』とかいう弓のヤバい情報が次々と見つかった。


 曰く、米軍特殊部隊がいまだに現役で使用している兵器である。


 曰く、最長射程距離(最も遠くの目標に当てた記録)の世界レコードが283.47 m


 曰く、ガチでこの能力を使い切るためには拡大スコープとレーザーポインターが必須であること、などなどなどなど…………


 そして、我々が最も驚いたことは……いいんですか?こんな物騒なもの無許可で販売しちゃっても……


 まあ、ボウガンは日本では所持禁止になりましたけど…………ちなみに、ノエルさんにボウガンを見せたところ「こういうのじゃないんだよなー」と一瞬で却下。なるほど、エルフにはエルフのこだわりというものがあるのですね。


 というわけで、我々の目標はこの『コンパウンドボウ』ということに決定したのだー(ワーパチパチパチ


 目標が決まって思わず万歳する私とノエルさん。


 「サバンナカフェ」にいらっしゃる、自称「出来る私」さんたちからの視線が痛い痛い。


 というわけで、居ずらくなったので今度は休憩所にレッツラGO!!



 流石『東洋一の売り場面積』を謳うだけのことはある『グランド デポ 東京幕張店』。いたるところに休憩スペースがありまくりでいうこと無しです。もちろん全館フリーWi-Fi、いいんですかね、こんなに大盤振る舞いで。


 港区だったら座っているだけで一時間2千円くらい取られるような前衛的なソファーに並んで座ってノエルさんと『コンパウンドボウ』の購入方法を考える。


 現代の宝島とも言われ、この世の全てがあるとも言われている『グランド デポ』でも、やはり『コンパウンドボウ』は流石に売ってはいない。ですよねー。


 そんな感じでやはり、購入方法は通販ということになるのだが……果たして一体どうすればいいのやら……と、インフォメーションセンター近くの休憩所であれこれ作戦を練っていたのだが、やはり『お届け先』という最後の一歩のハードルが高い。あーあー、流石に『宿屋アニータ』の10号室では届けてはくれまい。


 どーしたらよかんべかなーと思案に暮れていたら、ふと、インフォメーションセンターに気になるちらしが……ふむふむふむ。


「おおうー、こりゃー、もしかして」


「んっ?どうしたんだいサファイヤちゃん、なんかいい考え浮かんだ?」と若干あきらめムードのノエルさん。諦めたらそこで試合終了ですYO!!

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