第25話 同伴ってなーに? その2

 コンパニオンと聞いて私が真っ先に思い浮かべたのは、綺麗なお姉さんが、温泉旅館とかにお呼ばれして、おっさんのお酒の相手をするあのお仕事……いやですよー、私これでも、元令嬢ですよ(よく覚えとらんけど)。いまさらおっさんのお酌をするスキルを身に付けたって嬉しくとも何ともない。


「いえ、ちがいますよ」と運営さん。


 あらやだ、もしかして今、私の心の中を読みました?


「いえ、多分そうじゃないのかなーと、推測で答えました」


「あっ、すごいっすね」私はそう言って、誰もいない空に向かって会釈をする。


「いえいえ、大したこと無いですよ。説明を端折ってしまってすみません。それで、コンパニオンとは『同伴』という意味です」


 すると、即座に私は頭の中に、キャバクラのお姉さま方が指名欲しさに出勤前に太客とデートする例のアレを思い出す。えー……今から水商売にジョブチェンジですかー……


「いえ、そっちの同伴でもありませんよ」と運営さん。


「じゃあ、なんですか?」と私。


「コンパニオンとは(同伴)という意味ですけれど、サファイヤ様がいまご想像なされたような『ご同伴』ではなくて、スキル『グランド デポ』を発動された際に、MP50ごとに一人ずつ、どなたかとご一緒に『グランド デポ 東京幕張店』に行くことができるスキルです」と。


「おおおおおー、パーティーの誰かを『グランド デポ』に招待できるのー!!」と私。


「はい、MP50は消費いたしますが……」


 えー、ってことは、『グランド デポ』一回唱えるごとにMP100を消費するんですかー……と思っていたら、


「今回のレベルアップでサファイヤ様の最大MPが120になりましたよ」と運営さん。


 あらやだ、最近よく見てなかった。


 私は早速パーソナルゲージを開いてみると……たしかに最大MPもHPも爆上がりしてるじゃないですか、なんもかんもベイルさんのお陰です。あざーっす。


「あとそれから、ご同伴のスキルを与えられた方には、運営から『グランド デポ ファミリーカード』が一枚発行されます。次回ご来店の際に、インフォメーションセンターで『ブラック デポ カード』をご提示いただければお渡しすることができます」と運営さん。


「何から何まですみませんねー」私はそう言ってまだ見ぬ『運営』さんに向かって深々と頭を下げた。


 そして、顔を上げると……瞳を爛々に輝かせたみなさんの顔があった。


 ……えーっと、えっとー。


 すると、私が何か言うよりも先に「マジデ!マジデ!マジデー!!」とテンション爆上がりのワンコみたいにエルウッドさん。


「もしかして俺も『グランド デポ』行けちゃうの!?!?」とノリノリのノエルさん。


「おいおいおい、サファイヤちゃん、そのスキル、マジかよ!!」とウキウキのベイルさん。


「えーっと、その、『グランド デポ』に一緒に行ける仲間っていうのに……私も含まれているんですか?」といつもながら遠慮深いナジームさん。もちろんですよ。


 そして、「では、『グランド デポ』とコンパニオンにカンパーイ!!」とみなさん。


 ところで『サファイヤちゃんへの』感謝の言葉は?



 と、まあ、そういうわけで、明日は急遽臨時のお休みとなり、まずはリーダーのエルウッドさんと一緒に『グランド デポ 東京幕張店』に行くことになったのです。(ワーパチパチパチ


 ……もう、ヤな予感しかしない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る