第14話 異世界からのプレゼント その1

「まずは皆さんにこれ、一本ずつどうぞ」とみんなにLEDのハンドライトを渡した。


「なんじゃ、こりゃ……」としげしげ見ながらベイルさん。


 すると、「のわぁぁぁぁ!!」となんとベイルさんはライトのレンズに目を近づけた状態でスイッチを押してしまったのだ。


「あー、ダメダメ危ない危ない」と私。


 即座にみんなハンドライトをテーブルの上に放り投げる。


「ゴメンなさい、最初に説明してなくて、これ、ライトです。あっちの世界の?」


「「「「ライト!?!?」」」」


 ええ、こちらの世界だと魔術が使える皆さんは明るく照らすこととか出来ますけど、ベイルさんとかノエルさん、できないじゃないですか。


「……まっ、まあ」と気まずそうにベイルさん。


「……確かに。でっ、でも、俺は夜目が効くから全く見えないって訳じゃないぜ」とノエルさん。


「でも、皆さん持ってると便利ですよね」そう言ってにっこり笑う私。


「「「「確かに!!」」」」


「明後日からまたダンジョン攻略するんですよね。これ、皆さん持ってるといちいち魔法を使わなくてもいいかなーなんて……」


「あんがとな、サファイヤちゃん、こんな高そうなもん、みんなに買ってくれて」


 ……そんなに高くはないんだけれどなー。まあ、正直に言うか。


「そんなに高くないです。エルウッドさんがいつも飲んでいるワインよりも安いですから」と私。


「「「「マジでー!!!!!」」」」


「はい、特売セールで……だいたいこちらの通貨で言うと10メニーしませんから」


「「「やっす!!!」」」


 ちなみに『メニー』とはこの国の通貨単位で、1メニー=100円くらいです。


「ってか、これ、どういう原理で光るんだよ」としげしげと見ながらエルウッドさん。


「実はこの中には電池というものがありまして」私はそう言うと、LEDライトを分解する。「これにこちらの世界で言うところのマナが貯めているんです」と。


「「「「ほほーう」」」」と興味津々の皆さん。


「じゃあ、この電池とやらが無くなると使えなくなるのか?」とノエルさん。


「いいえ、この電池だけ交換すればまた使えます」といって、ロットで購入した単四の乾電池をみんなに見せる。


「「「「おおおおおーー」」」」


「少なくとも、ここにあるだけで1年分は持つと思います」と乾電池のロットを見せる。


「「「「ほほーう」」」」と皆さん。


 まあ、後はいろいろ日用品とかを買っておいたのだが、いちいち説明していたら日が暮れてしまうので、先に渡したいものだけ渡そうと思う。


「後、いろいろアイテムを買ってきたんですけれど、まずはコレ、ベイルさんに」私はそう言って段ボール箱の中からベイルさんへのプレゼントを渡した。


「どっこいしょっと」そういって、私はベイルさんに『グランド デポ』で最大のバールを渡した。


「おおおー、こりゃ、すっげーなー。ぶっ叩き甲斐がありそうだ」そう言ってバールをブンブンと振るベイルさん。


 実はベイルさん、昨日、フロア5から脱出する際に、階段でモンスターを押し倒した際に一緒にご自慢のスレッジハンマーも放り投げてしまったのだ。


 昨日の反省会で「これで見つかんなきゃ、まーた、一カ月ただ働きだー」と言ってたのを覚えていたので私はベイルさんに当面の間スレッジハンマーの代わりにと特大の鉄道バールを買ったのだ。


 ちなみに鉄道バールとは鉄道の保線の為に使われる長さ2m、重さ8キロほどの一本鎗のような形をしたバールです。バールってなんか……ロマンがあるよね。


 ちなみにこちらの世界ではとにかく鉄物の工具がめちゃくちゃ高いのです。ベイルさんが使っていたスレッジハンマーもこちらの世界で鍛冶職人の方に注文すると1本50万円くらいするんですって。


「でも、サファイヤちゃんいいの?こんな高価そうなもの」


「気にしないでくださいベイルさん、昨日ベイルさんが階段でモンスターを足止めしてくれなかったら私達こうして今ここでコーヒーすら飲めなかったんですから」と。


「で、でもなー……」とそれでも申し訳なさそうに恐縮しているベイルさん。ここはやっぱり、正直にこのバールの値段を伝えなきゃ。


「えーっと、お値段、大体100マニーです」


「やっす!!」と思わず言葉が口から飛び出てしまったベイルさん。「あっ、ごめん、そんなつもりじゃなくって、その……」と気まずそうに黙りこくってしまったベイルさん。なんか、逆にすみません。


「気にしないで下さい。ベイルさん。私の国では鉄の加工品はこちらの世界に比べたらかなり安く手に入るのですよ」と。


「そ……そうか、なんか、ごめんな。スレッジハンマー回収出来たらこれ、返すよ」


「いや、返されても邪魔になるんで結構です」


 すると、他のメンバーがくすくすと笑う。とりあえず、ベイルさんは鉄道バールを受け取ってくれた。


「あと、それから」と……私はさらに段ボール箱をゴソゴソとひっくり返しながら、「あっ、あった、あった。はい、コレ」とキャンプセールで大安売りだった手斧を渡す。


「いやいやいやいや、サファイヤちゃん、これはいいよ。斧なんか高くてもらえないよ」と受け取ろうとしないベイルさん。


 しかし、私は一向にかまうことなく、ベイルさんのテーブルの前に次々と買ってきた手斧を積み上げていく。


「おいおいおいおい、一体何本買ってきてんだよ」とエルウッドさん。


「えーっと、斧が特売で、-本10マニーで売ってたんで1ダース買ってきました」と私。


「「「「………………」」」」開いた口がふさがらない皆さん。


「ほら、ベイルさんも飛び道具があると戦いのときに便利でしょ」と。


「たっ、確かに、物理的な飛び道具はうちのパーティーはノエルの弓矢だけだ」とエルウッドさん。


「これ、全部ベイルさんにあげますんで、良かったら、飛び道具代わりで使ってみてはいかがですか?」


 ベイルさんは10マニー(正確には980円で10%のポイント還元付き)で購入した手斧をしげしげと見つめている。


「本当にいいのかい、サファイヤちゃん」


「はい、ベイルさんの戦闘力が上がることは私達にとってもとても助かりますので」


「わかった。この、ベイル・ビンセント、次のダンジョン探索の為にこの手斧を完璧にマスターするぞ」と断固たる決意でベイルさん。


 いやいや、そんなに気合い入れなくてもいいですよ。あと、足りなくなったらいつでも言って下さい。


 さて、ベイルさんのお土産はこんな感じかな。さて次はノエルさんだ。

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