第12話 グランド デポ 再び その1
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♪「ハッスル ハッスル ハッスルー 今日は楽しい休日だ」♪
♪「ハッスル ハッスル ハッスルー 今日は何をしようかな」♪
♪「こんな天気のいい日には (いい日には?)『グランド デポ』でDIY(DIY!)」♪
♪「こんな陽気のいい日には (いい日には?)『グランド デポ』でDIY(DIT!)」♪
♪「カナヅチ ノコギリ グラインダー 『グランド デポ』にはなんでもある」♪
♪「メジャーにものさし レーザー墨出し器!! 『グランド デポ』にはなんでもある(すごーい)」♪
♪「バールにパイレン、チェーンソー これであなたも(チャンチャン)カーペンター」♪
『グランド デポ』木材加工売り場のBGM、『今日からあなたもDIY』のバイブスが私の心を震わせる。
この曲を聞くと反射的に3×6(サブロク)のコンパネを買ってしまいそうになるのは私だけではあるまい。
ヤバイヤバイ、別に何作るって訳じゃないけど、とりあえず、コンパネとかベニヤって家にあると落ち着くよね(ハート)
ってそんなことをやっている暇はないのだ。大体正面玄関からすぐに木材売り場ってのがあざとい。DIY心をくすぐりまくりじゃないですかー!!
私は後ろ髪を引かれるながらも、木材加工売り場を後にして、ATMコーナーへと向かうのであった。
今日は久しぶりの休日とあって、のんびりと朝の10時まで寝坊させていただきました。
部屋の片づけをちょっとして、ふとパーソナルゲージ(自分のHPやMPが表記されているグラフ、発動させるとMP0で空中ディスプレーのように出て来るのだ。でも体重とかわざわざ出さなくてもよくないですか!?)を見てみると、なんとMPが60も溜まっていたのだ。
アレレ……ってことは、アレだ。昨日のバトルでレベルアップしたんだね。やったね私!!
そうとなれば話は別だ。私は早速軽い朝食を済ませると、『グランド デポ』を発動させた。
さて、久しぶりの休日、午前中から有意義に使ってやろうじゃないか。
すると、ATMコーナーへ向かう途中でかぐわしいコーヒーの匂いが……あら、やだ、挽きたてのコーヒーが売っているじゃないですか。しかも、こんなにいい香りのコーヒーなんて……あちらの世界ではとんとお目にかかれない上物だ。
気が付くと私は『グランド デポ』コーヒー直営店、『サバンナコーヒー』で本日のおすすめの1杯を飲んでいた。
ほほーう、今日のお勧めは『マンダリン』ですか。
あー、うっめーなー、コレ、染みるわー……
コーヒー1杯100『GD(ポイント)』だけど、まあ、いっかー、これくらいは。
そんなわけで、残高18400ポイントなり。
と、タイムゲージを見てみると、あらやだ、気が付けば5分経過してる……私は渋々カウンター席から立つと、コーヒーの入った紙コップを持ったままATMコーナーへと向かっていった。ふふふーん♪
……3分後、私はATMの前で私は固まっていた。
えーっと、暗証番号っていくつだったっけ。
……10秒ほど機械の前で固まっていると……そうだ、こういう時は『天の啓示』さんに聞いてみよう。
私はとりあえず、ATMの前から外れて、『天の啓示』さんに話しかけてみる。
ほら、あんまりATMの前で不審な行動すると『オレオレ詐欺の出し子』と間違われちゃうかもしれないでしょ!!
「えーっとー、もしもし、『天の啓示』さんいらっしゃいますか?」
「……はい、日渡様いかがなされましたか?」
おお、反応はえーなー。
「あのーカードの暗証番号忘れちゃったんですけど……」
「…………はぁ」
「暗証番号教えてくれるってのは……ダメですかねー」
「………………さすがにそれはちょっと」
「ですよねー」
そりゃ、そうだ。「暗証番号忘れました」「じゃあ、教えますよー」なんてやり取りは、この世にもあの世にも存在しない。
「えーっと……そういう場合はー」
「そうしましたら、暗証番号の再登録が必要になりますね」
「……再登録ですか!!」
「はい、ご登録の生年月日をお教えいただければ、ご登録されたメールアドレスにご送信いたしますよ」……と。
だから、その生年月日も、登録したメールアドレスも分からないんだって……と思ったところで、脳裏に数字が浮かんできた。……あれっ。
「あのー、もしかして、生年月日って」
「はい、このカードを作られたときに登録された生年月日ですよ」と『天の啓示』さん。
「それって、もしかして、9月15日だったりしませんか?」
「…………はい、そうですね」
『天の啓示』さんの心の迷いがなんとなく伝わってくる。
なるほど、これが教えてくれるギリギリのラインなのか……ってことはアレ、もしかして……
「えーっと、ちょっとその前に確かめたいことがあるので、後で連絡しなおしてもよろしいですか?」
「はい、結構ですよ。それから……」
「はい?」
「私の名前は『天の啓示』などとだいそれた呼び名ではございませんよ」と『天の啓示』さん。
「あっ……そっ、そうなんですね」てっきり周りのみんなが『天の啓示』と言ってたからそういう呼び名かと思っていた。
「えーっと、じゃあ、なんて?」
「はい、一応、わたくし共の呼び名は『コンセルジュ』ということになっておりますが、別に『オペレーター』でも『係員』でも『運営』でも構いません」
「あっ、そうなんですね」
なんか随分といきなりハードルが下がったわね。
「じゃっ、じゃあ、なんとなく呼びやすいので今度から『運営さん』でかまいませんか?」と私。
「はい、かまいませんよ。日渡様。では、またの御用がございましたらお呼びかけ下さい」そういって、運営さんとの会話は終わった。
一応あたりを確認する。うん、私の事ジロジロ見ている人はいなさそうだ。
よくよく考えれば、ATMの近くでブツブツ独り言を言っている人物なんて、不審者か犯罪者のどちらかでしかいない。私だったら間違いなく通報している。
もう一回、あたりをキョロキョロ確認するが、どうやら取り越し苦労だったみたいだ。私は手にしたコーヒーをキューっと煽ってからカードを握りしめ再びATMの前に立ったのだ。
そして震える手でATMにカードを差し込む、そして、日渡あかねの誕生日の『0915』を打ち込んだ。
するとATMの画面には、
「日渡あかね」様
残高3,834,295円と…………
うおっしゃぁぁぁぁぁぁぁ!!キタコレー!!キターーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!
私は思わずもろ手を挙げて、ついでに雄叫びも上げた。
エライ、私、エライよー私。
ちゃんと貯金してたんだねー。
頑張ったねー自分。
今、心の底から自分で自分を褒めてあげたい(by有森裕子)
するとその直後、『グランド デポ』の警備員の方たちが私の周りを取り囲んだ。
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