第3章

第36話 聖女アンナの来訪

 大粒の雨が降りしきる中でも、噂というものは届くらしい。


 リアがクラウスに直談判した翌日の夕方、びしょ濡れのアンナが屋敷に飛び込んできたのだ。

 屋敷に倒れ込むように入って来た現ヴェルタの聖女のアンナは、唖然とした使用人たちを睨みつけると、開口一番にこう言った。


「クラウス様の正妻になるのは、私、アンナ・バーレだわ‼」


 驚き呆れる使用人たちを尻目に、アンナは屋敷の奥へとずんずん進んでいき、侍女たちの静止の声で、ようやく足を止めたアンナは、使用人たちにすげなく言い放った。


「着替えを用意なさい。湯も沸かして」


 まるで屋敷の女主人のような物言いに、侍女たちは顔を合わせ、それでも絨毯が汚れるくらいならと、アンナの為に浴場と衣服を準備したのだ。

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