第9話これは…酷いな
「…終わったぞ…ルナ」
リアがそう言った時には辺りは静かになっていた…。
「にぃに…大丈夫ワン?」
不甲斐ない俺をクルルは心配してくれているようだ…。
「豊和君…終わったから…終わったから…ねっ?」
「…悪い…ルナ」
「ううん…気にしないで?」
最初から分かってた事だろ?モンスターも人も異世界では命を取り合うという事は…。何度も小説やアニメで見たのにな。現実は本当にそう簡単にはいかないよな?俺の体の震えは未だに止まらない…。
「…ルナ」
「何、お姉ちゃん?」
「アイツ等の死体を見せて…少しでも馴れさせた方がいい…でなければ死ぬぞ?」
「…今は無理なんじゃあ…」
「今回は私一人で問題なかったが…全員で相手をしないといけなくなる場合、躊躇したら死ぬぞ?」
「…分かってるけど…」
「…死体すら見れないのなら…旅なんて止めて家で過ごした方がいい…」
リアの言う事はもっともな事だと思う。躊躇したら冗談でも比喩でもなく死ぬのは俺だ…。
「…もう大丈夫だ、ルナ…」
「…でも」
心配しなくてもいい。ルナ…。旅を続けるならこれは乗り越えないといけないんだ…。
「見るんなら吐いてもいい…ただ…覚悟して見るんだ…。躊躇したら自分がそうなると、心に刻め…」
「リアありがとう…」
俺は盗賊の死体を見て回る…。何度も何度も吐いた。首は胴体から離れ…腕や足も斬られ落ちている…。臓物は辺りに散らばり、辺りは小さな血の池とも言えるべきものもある。とてつもなく凄惨…旅をするなら避けて通れない現実…。
それから数日間はルナとクルルが添い寝してくれた。夜中にあの光景を夢に見て大声をあげて起きてしまう為だ…。
「…大丈夫?」
「ありがとうルナ…。最近はルナにお礼を言ってばかりだな…」
「お礼なんて必要ないよ…私が好きでこうしてるんだし…」
「…ルナは…どうやって慣れたんだ?」
「…たまに…ああいう人達は居るんだけど…生命を奪って慣れる事はないかな…」
「…そうなのか」
「…私は弓だから…刺したり斬ったりという感触を直に感じる事は殆んどないんだけど…」
殆んどと言った?
「たまに…接近戦になると短刀だったり矢で応戦するんだけど…その感触って…やっぱり慣れないよね…」
「……」
「それでも…そうするのは…私は死にたくないし、殺されたくないからだと思う…」
「…そうだよな」
「…不安だし怖いよね?」
「だな…」
「こここここ、こういう時は…」
「んっ?」
ルナの雰囲気が変わったけど…何で顔が真っ赤なんだ?
「わ、私と繋がればいいんじゃないかにゃ?」
「…はっ?」
「むむむむ、昔から…伝説というかそういうのがあって…人肌の暖かさを感じるとよいとかなんとか言っちゃるめっ!?」
「…言っちゃるめって何だっ!?」
「わわわわわ、私は…豊和君なら…しにょお…初めては…豊和君に捧げたいというか…あばばばばっ…」
ルナを引き寄せ…
「ふみゃあ!?」
「…俺もその時はちゃんとしてからルナに言うから…今日は抱き締めたまま寝てもいい?」
「…うん」
「にぃに…ルナねぇも…私も居る事忘れないでワン?」
「「…はい」」
私も居るからな~!と、言ってるリアを放っておいて俺は夢の中へと入っていった…。
「今回の私はカッコ良かった筈なのに…何故扱いが雑なのだろうか?」
そんなリアの呟きはクルルの耳にはしっかり入っているのだった…。
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