第3話 心の声
電車に揺られ 僕は 母さんが 住んでいた あの家へ 向う
僕が 住んでいる町から 電車を乗り継ぎ 1時間......
駅を 降りると 結構な都会に 思えた。
僕が 住んでいる町は 程よい田舎で、ショッピングができる所は
少なく この駅周辺は 高層ビルが建ち並び 一店舗が一店舗が オシャレで 大きく見えた。
駅からタクシーに 乗り換え 母さんの住んでいる 住所を教え 向かう......
窓から流れる 景色を見ながら
ここが 母さんが 住んでいた町なんだと 複雑な思いに 駆られ......
そして...だんだんと 町から離れて行く
この光景が 僕の不安を煽る......
心臓は 少しづつ 強く 僕の胸を
内側から 壊し始め......
タクシーが 止まった時には 震えが止まらなくなっていた......
お金を払う 手は震え
タクシーの運転手は
「お客さん......大丈夫ですか?凄い汗ですが...」
と、心配させるくらい 僕は冷や汗と動揺で......なんとか
「大丈夫です。」
と、答えた......
タクシーが去り
あの 3Dマップで見た 写真が......
僕の目の前に......
言葉を失い 何故か 溢れ出る涙
一歩も動く事のできない 光景
もしかしたら 間違いだったかもと
少しは 希望とか......
もしかしたら ああなっていても
母さんやナツメが 住んでいるんじゃないかと 勝手に想像したり
だけど......この光景は 僕も虚しく絶望へ 導く......
写真で見る以上に 殺伐とした
家は 異常でしかなく 張り紙は......
魔除けなのか読めない...
この家で 何かが 起こっていた事は 間違いではない......
中に入れない僕は......門の外から
それでも 声をあげたくて
「かっ......かあさーん!なっナツメ!ぼく...だよ......達也だよ...ナツメ......にいちゃんだよ......」
何度も何度も......呼びかけていた...
通り過ぎる人たちは......僕を避けるように 足早に... 目を合わせないように 顔を背け...
それでも...それでも...願った......
僕は 心の中で 助けてくださいと
誰か 僕に声をと...
どうか 誰か助けて......お願いだから......助けてください......と......
無情にも 雨が......降り
僕の心を......冷やし その場で 倒れ込むように 膝まついて 途方にくれた......
時が流れたけど......立ち上がる事ができない......
そんな絶望の 僕に......傘を差し出してくれた......人が...
見上げると...さっきの......タクシーの運転手だった......
僕を......救ってくれて......ありがとう......本当に ありがとうございます。
優しく 僕の体を 抱きかかえ 肩をかしてくれた......
この日 絶望の淵から 僕を救ってくれた 唯一の人だった......
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