水沢朱実

第1話


今夜も、私は水の中にいた。

これは夢? それとも現実?


私には珍しく、今の自分がどこにいるのか確かめなかった。

薄い布地が身体に絡みつき、

今日の私は、いっそ、生まれたままの姿で水に溺れたい、と思う。


それは、叶わない願いなのだろうか?


魚や、イルカやクジラ。

彼らに私は追いつけない。

私は水を掻き、必死に手を伸ばす。


あ、あ。


イルカの一匹が、こちらへと踵を返した。

“ありがとう”

イルカの上びれに、私はしがみつく。


“無理な話だけどね。”

私のささやきに、イルカがクウ?と疑問を投げかけてくる。


私はきっと、“水”になりたかったんだ。

母なる海の一部に。


でも、それは無理だから、こうして、“あなた”と一緒にいるよ。


“ありがとうね”

もう一度囁きかけると、イルカはぐん、と身を起こした。

“わあ、待って、待って!”

私の声を面白がるかのように、

いたずらなイルカは私を乗せて泳いでいく。

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水沢朱実 @akemi_mizusawa

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