第16話 プレミアムフライデー

 金曜の閉店時間近く、突然ラーメン食べたくなった! 

  

 ――今日はプレミアムフライデー――って死語? でしかも給料日だけど、食べに行くのは休日前の明日の夜にしよう。 

 好きなラーメンはいわゆる豚骨醤油の家系――一杯約890kcal――脂質もとても多い。 

 女子ってる間の一日のカロリー量はあんまり動く仕事じゃないので1,400~2,000kcalらしいから……半分以上?……だよなぁ。 

 ああ〜でも濃厚な豚骨醤油ラーメン……豚骨や鶏ガラから取った出汁に醤油のタレを混ぜたスープにからむ太麺! 

 ホウレンソウ、チャーシュー、海苔、味玉のトッピング……麺硬め、油少なめ味普通! おろしにんにくたっぷり入れて……あぁ〜たまらないぃぃぃ! 

  

「……ょう……ちょう、店長! 聞こえてます?」とチーフ。 

「んぁ? あ、ごめん……」よだれ出てたかな……? 

「明日、給料日後のおやすみ前の土曜日だから、ぴーちゃんが『みんなで晩御飯食べにいきましょうよ〜』って言ってるんですけど、店長もいかかですか?」 

  

「……ラーメン!」 

「へ?」 

「だから、ラーメン! 豚骨醤油家系ラーメンをオレは喰う!」 

「女子ってオレって言わないで……って、ラーメンですか?」 

「うん、コラーゲンやコンドロイチン……お肌に嬉しい成分が含まれているぞ!」 

「……」 

「それに夜はまだうすら寒いから、温ったまるぞ〜、カズミさんのところの駅前支店近くに家系ラーメン店があるんだ〜♪」 

「ん〜女子だけでラーメン店……わたしあんまり行ったことないですけど……みんなに聞いてみますね」 

「うん、ラーメン推しといて〜」 

  

  

「店長、良かったですね〜」 

「ん? 何〜?」 

「明日の晩御飯、ラーメンに決まりましたよ……」 

「おおっ! いいねぇ〜」 

「ぴーちゃんが『店長が家系ラーメン食べたいって言ってたよ〜』って言ったら目輝かせちゃって、『わたしもラーメンに1票!』って……」 

「そうだろ、そうだろ〜、ラーメンはいいぞぉ!」 

「わたしあんまりラーメン食べないですしねぇ……っていうかあんまり食べたくない……かな〜って」 

「ん〜そっか〜……ちょっと残念だな」 

  

  

 翌日、閉店時間。クロージングを終えて……。 

「チーフ、ラーメンあんまり食べたくない?」 

「まぁそうですけど、みんなが行くなら……」 

「……じゃ、今日は全員分、わたしが出すから行こう? ならいいでしょ?」 

「!」 

「やた〜」「太っ腹!」とぴーちゃん、ユユ、ユリ……。 

「腹、出てないし! でも食べすぎると体に悪そうだから、月一くらいに決めてるんだよね……脂肪とかカロリーとか」 

「まぁそうですよね〜」とチーフ。 

  

「それにラーメンは下腹に脂肪がつく食べ物なんだよね〜 お腹ぽっこりじゃいやだもんね……」 

「ぷっ! てんちょ〜幼児体型のくせに気にし過ぎ〜」とチーフ。 

「あ? 何か言ったか〜? 奢るのやめよっかな〜」 

「あ、何にも言ってないですよ〜、早くお店閉めてみんなで行きましょう〜」 

  

  

「ん〜! 体に悪いものは美味い!」 

「ですね〜!」とぴーちゃん。 

「……」他は全員無言だった……。 

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