「金色の雪」
水沢朱実
第1話
先日、大好きだった音楽家が死んだ。
二十年、三十年。
・・・・・・ううん、もっとずっと前。
私が子供の頃から、彼の音楽はいつも身近にいて、どんな時も、私を見守っていたのだ。
ニュースの画面を見ながら、わあわあ泣いた。
もう、最後なの?
もう、会えないの?
泣き疲れて涙を拭った時、私は信じられないものを見た。
きらきら、幻。
細かな金色のものが。
金色の雪が。
天井から、どこからともなく、しんしんと、部屋の中へと降り積もっていく。
その金色に、私は吸い込まれそうに、口を開く。
”あなたの、音楽を聴いた人たちのことを、一人一人、訪れているのですか?
あなたが、あなたの音楽に救けられた人を、
一人ずつ、回って。”
そんな私の耳に、これだけははっきりと、“声”が聴こえてきた。
終わりの先には、始まりがある。
いいじゃないですか。
終わりのない気がして。
信じてるからこそ、がんばれる。
そんな気がします。
”・・・・・・はい。”
”はい!”
金色の雪は、だんだん小降りになっていき、とうとう、私が手を差し伸べた右手の中に吸い込まれるように消えた。
”ありがとう。”
一人ごちる。
私は、ここで生きていきます。
「金色の雪」 水沢朱実 @akemi_mizusawa
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