第2話 震える手

 デスクの上、電話が鳴っています。

 ここは物流現場に臨時で作られたデスクです。


 まだ僕が物流に異動する前、

 そのほぼ7年前のお話です。

 そのころの所属はシステム室でした。


 内線電話です。

 外線と内線では音を変えているからわかります。


 右手を受話器に伸ばしました。


 ふと気づきました。


 小刻みにその右手が震えているのです。

「え…? 」


 それでも受話器を掴みましたが

 やはり取り落としました。

 おそらく相手は思わぬ衝撃音に

 驚いているでしょう。


 あわてて左手でそれを掴みました。

 でも右手ほどではないですが震えています。


 どうしようもない…。

 震える右手と左手、両手で受話器を持ち、

 左の肩にそれを固定して

 どうにか電話に出ることができました。


「堀です…」

 声は震えていないようです。


「ああ、堀さん、またトラブルだ…」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る