第20話 アメリーは痴女?

「これとかいいんじゃにゃいかにゃ?」


 試着室から出てきたアメリーは、黒色のぴっちりとした装備に身を包んでいた。ニーハイソックスと長手袋を装備して、肌が露出しているのは太ももと肩と顔くらいだ。


「うーん、いいのかなぁ……?」


 私には冒険者の装備について良し悪しが分からないけど、アメリーの格好は、なんだか心許ないほど軽装な気がする。


 とくに、ミニスカートを穿いて、太ももが出ているのが気になってしまう。


「やっぱりズボンにしたら?」

「ズボンは股に張り付く感覚が苦手にゃ。それにこっちの方が動きやすいのにゃ」

「うーん……」


 たしかにミニスカートの方が動きやすいだろうけど……。


「パンツ見えちゃうかもよ?」

「? べつにパンツくらい見られても気にしないにゃ? それに、命がかかってるのにそんなの気にしてられないにゃ」


 それはそうだと思うけど。気にしないんだ……。アメリーは痴女……は言い過ぎかもしれないけど、大胆な女の子らしい。


 私ならパンツ見られるなんて絶対嫌なんだけどな。これも地球と異世界の感覚の違いなのかも?


 ちょっと心配だけど、アメリーの装備はこれで決まった。


 アメリーは、弓と剣を使うらしい。私の身長と同じくらいの大きな弓だ。


「現役狩人のおじさんたちには負けるけど、こう見えても同期の中では一番の腕前だったにゃ!」

「すごいね!」

「慣れた弓もいいけど、新しい弓もわくわくするにゃ!」


 アメリーの装備代はグウェナエル持ちなので、とことん良い物を追求して買ったらしい。


 それに、ドワーフは良質な武器や防具を作ることで知られていて、この店にも迷ってしまうほど良い装備がたくさん置かれているようだ。


 私には装備の良し悪しなんて分からないから、全部アメリーの受け売りだけどね。


「うーん……」


 さまざまな武器や防具が置かれているこのお店にも鉄砲や大砲のような武器は無かった。私には鉄砲の知識なんてないけど、もしかしたら火薬が無いのかもしれないね。


「にゃーの装備は決まったにゃ。次はマイの番だにゃ」

「え? 私?」

「そうにゃ。ここには魔法使い用の装備もあるから、そこから選ぶといいにゃ。直接モンスターとは戦わにゃいかもだけど、防具くらいは固めた方がいいにゃ」

「わたくしもその方がいいと思いますわ。わたくしもこの下にはミスリルの楔帷子を着ていますし。マイ殿はまだ体が小さいですから、軽量のミスリルの装備がいいかもしれません」

「そうなんだ……」


 アメリーとシヤに連れられてやってきた店の一角には、ゆったりとしたローブや指輪などの装飾品、いかにも魔法使い用らしい杖なんかが置かれていた。


 ここが異世界じゃなければ、まるで遊園地のグッズ売り場のような品揃えだね。なんだかファンタジーな品々にわくわくしてきた。


「どれがいいのかな?」

「うにゃー……。にゃーにも魔法使いの装備はよく分からないにゃ……」

「でしたら、ここはわたくしが」


 シヤが私の装備を選んでくれるらしい。冒険者の装備って命に直結するらしいから、ちゃんとした物を選ばないとね。


「まずはローブを決めましょう。それと、鎧下と鎖帷子も。あとは杖ですが……マイ殿の力はまほうですわよね?」

「え? どうなんだろう?」

「マイは強力な魔法使いだにゃ」

「では、魔術師用の杖は必要ないですね」

「え? え?」


 シヤとアメリーと一緒に私の装備を選んでいく。一番驚いたのは、魔術と魔法はどうやら別物だということだ。


「魔法と魔術って何が違うんですか?」

「そうですね……。魔術師は、魔術陣という回路を魔力で満たして発動するのです。これは回路に刻まれた決まった効果しかもたらせません。逆に魔法使いは、一つの魔法しか使えませんが、魔術より融通が利くらしいです。使える魔法は強力なものが多いらしいですが、魔法使いは魔術が使えません」


 そう言って、シヤは杖を一つ手に取ると、杖の先端の丸い部分を分解して見せてくれた。見ると、中には回路のように複雑な形に加工された金属が填まっていた。


「これが魔術陣と呼ばれる魔術の肝ですね。魔術師はこの魔術陣に魔力を通して魔術を発動します。これは眉唾のお話ですが、魔法使いは魂に回路が刻まれているのではないかという話です」


 私の魂に回路が……。なんだかちょっと怖い話だね。


「舞よ、結局どちらの方が強いのか訊いてくれ。シヤの話はよく分からん」


 私もクロと同じく、シヤのお話はあまり分からなかった。だけど、私も魔術師と魔法使いどちらの方が強いのか気になったので訊いてみる。


「あの、魔術師と魔法使いってどちらの方が強いんですか?」

「一昔前なら魔法使いと答えるところですけど、最近は魔術技術も上がってきています。状況によって使える魔術を切り替えることができる魔術師の方が汎用性があるでしょう」

「そうですか……」

「でも、マイとクロはグエルを倒せるくらい強力な魔法使いにゃ!」

「ありがとう、アメリー……」


 魔術師の方が強いのはちょっと残念だったけど、シヤの言葉で分かったこともある。


 どうやら私が使える魔法は、相手を気絶させる魔法だけだということ。


 でも、クロも一つの魔法しか使えないはずだけど、バリアを展開したり、相手を閉じ込めたり、最近は自由自在に影を操っている。


 たぶんこれが融通が利くってところなのだろう。


 私もクロみたいに自分の魔法の応用した使い方を考えていかないといけないね。

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