ワープ 02 ~箱バン型転送装置~

かわごえともぞう

第1話 米国大統領府 

はじめに、 

 ワープ02は、ワープ01の続きです。二人の天才科学者が物体転送装置、いわゆるワープの発明ができたことから物語が始まる。元々は金が目的だったのが、全く金にならないことで、マジックの世界に染め始める。それから金が入ることになる。だが、プロのマジシャンがワープ装置を買って全米に波紋をすることになる。それがCIAの情報に入ることになる。


「ディック、今回だけは本当に感謝するよ」

ボキャナンが言った。

 執務室には二人だけが残っていた。

「8年間、大統領をやってきてこれといった華々しい成果は残せなかった。可もなく不可もなくってところで納得してたんだが、このシステムをものにできたなら、我がアメリカ合衆国はこれから先、100年、200年、世界の王として君臨できる。最後の最後にこんな仕事ができるとは、俺は幸運だよ、ディック、ありがとう」

「大統領、恐縮です」

「おい、二人だけの時はジョンと呼んでくれよ」

「ああ分かったよ。じゃあジョン、はっきり言う、お世辞じゃないぜ。俺はお前は歴史に残る大統領だと思ってるんだ。可もなく不可もなく8年間、この国が平和だったことがあるかい。ないだろう。戦争を起こして、大勝利して、そんでもって立派な大統領ってのが、この国の通り相場だ。リンカーンにしたって、ルーズベルトにしたってその範疇はんちゅうだぜ。粘り強く交渉すれば戦争なんて回避できるんだ。お前はそれをやったんだ。この国の若者の血を流さずに八年間やった大統領なんてお前以外いないぜ。10年、20年の歴史じゃ評価されないかもしれんが、100年単位の歴史じゃ評価は絶大だぜ」

 ディックのお世辞は、年季が入っている。だが、本音も多少は含まれている。

「そう言ってくれるのはお前だけだ。みんな、何の変哲もない大統領だった、なんて言ってやがるしな。分かってくれてうれしいぜ。感謝してるぜ」

 ボキャナンは、言いたくても言えなかったことをディックに言ってもらった気がした。

「感謝? 感謝してるのは俺の方だぜ。なんか、今までお前に世話になりっぱなしで、いつか借りを返さないといけないと思ってたんだよ。今度のことで少しでも返せたかなと思ってるんだ」

 ディックの素直な気持ちだった。

「借り?、俺はお前に借りた覚えはあるけど、貸した覚えはないぜ」

「何言ってんだ、お前が俺をここまで引き上げてくれたんじゃないか。たいした能もないこの俺を」

「馬鹿野郎、俺が初めて下院議員に立候補したときの事覚えてるか。最初は誰も応援してくれなかったよな。当選する訳ないって、みんなに馬鹿にされたよな。お前だけだよ、俺の後ろをよ、旗持って走ってくれて、一生懸命ビラ配ってくれたのは。お前がいなかったら、俺はとうに政治家の道は諦めてたよ。感謝してるんだぜ」

「ジョン」

「ディック」

 二人は抱き合い、そして泣いた。

 臭い芝居のワンシーン、想像しない方がいいかも………


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