第27話 焦らずゆっくりと

つむぎさん、結構食べれる方なんだね・・・」

「逆に啓介けいすけくんがあんまり食べれないの驚きだよ~」

「ええ、どうしてさ?」

「だって、結構しっかりした体してるから」


そうだな、平均よりはちょっと大きいくらいではある

なんで食えないんだろうな?俺も不思議だ

食べることは結構好きなんだけどなぁ


「逆になんでつむぎさんはあんなに食べてもそんなに華奢きゃしゃなの?」

「女の子にそれ聞く~?」

「あ、ごめん」

「冗談だよ~。私も普段体重とか気にしてるからね、今日は特別!」


趣味は普通の女の子と違っていても意外とそういう所はちゃんと気にするんだ

肌も綺麗だし、太ってないし、顔も良いし、髪質もさらさらだし、匂いも良い

ってこうやって列挙してる俺はキモイわけだが


ちゃんと努力してることが分かってお父さん嬉しいよ


啓介けいすけくん?どうしたの~」

「んあ。ああぁごめんごめん、ちょっと虚空こくうを眺めてた」

「そっか!よく分からないけど、とりあえずはイルミネーション見に行こ!」

「そうだな、寒いし行きましょうか」


俺がキモイことを考える時っていつもボーっとしちゃうんだよな

昔一回だけ、頭の中だけで留めておこうと思ったことをポロっと口に出してしまってめっちゃ気まずくなったことがトラウマで。大体こういう時は無言になってしまう


いや、まずそんな事を考えるなって話なんだけどさ


「異性とイルミネーション見るの初めてだ」

「私毎年イルミネーション見てるよ!」


なんだって!?も、もしかして・・・彼氏さん?

もしそうだったら俺今日何してんだってなるけど

確かに俺、彼氏いますか?とかつむぎさんに聞かなかったな・・・


「毎年お父さんとお母さんとお兄ちゃんと見てる!」

「うわ~良かった~」

「良かった?」

「あぁ、いやいや。こっちの話」


あぶね~、まだ彼氏いると確定したわけではない

でもいないとも言ってないし

・・・勇気出して聞くか


つむぎさんって、彼氏さん・・・いないよね?」

「ふぇ!?な、なんでそんなこと聞くの!い、いないけど」

「うわ~良かった~」

「む~!な、なんでそんなこと言うのさ!」


あぁごめんごめん

全くもって馬鹿にしてるわけじゃない

だって俺だって彼女いない歴=年齢だから


そんな俺に文化祭の日、初めてのチャンスが訪れたわけで

でもチャンスだと思ってたのに、つむぎさんが彼氏持ちだったら俺は何のために・・・?

ってなるから。確認したかっただけだ


「安心してくれ、俺も彼女いない歴=年齢だ」

「女の子に聞いちゃいけない3つのことなんだから!」

「そうなのか、申し訳ない」


なんか違う気もするけど・・・まあいいや

俺のお父さんは女子の機嫌は損ねるなって言ってたし

どうしても譲れないところだけ押し通すのが一番いいって


「お、イルミネーション見えてきたよ!」

「わー!ほんとだ!」


外はすでにだいぶ暗くなっている

そのおかげで冬はイルミネーションしやすいのだ

あとは空気が澄んでいるから、だったはず


良哉りょうやが言ってた。本格的なイルミネーションは見たことないらしいけど

そういうところも良哉りょうやらしい

みっきー、お前が良哉りょうやをイルミネーションに連れてってやるんだよ


「綺麗だなぁ」

「あ、これワンちゃんじゃない?」

「んー?うお、ほんとだ」


ライトで作られている光るワンちゃんだ

可愛い、俺も将来はワンちゃん飼うって決めてるから

謎のこだわりとして、結婚してから飼うってのも決めてる


「すごいな、ここ」

「ね!ワンちゃん以外にも沢山動物いるよ!」

「これ凄くない?キリンだって」

「わ~!高いね」


どうやって作ったのかは分からないが

約4メートルくらいのキリンがあったり、ゾウさんとか、ペンギンなんかもいる

それらも綺麗なのだが、やっぱり一番の見どころは


「この道、めっちゃ綺麗じゃない?」

「うん!なんていうんだろ、絢爛けんらんな道?」

「そうだね、というかよくその言葉をパッと思いついたな」

「ふふふ、頭いいでしょ?」


確かに絢爛けんらんという言葉が似合うような道だ

金銀のような豪華さはない

しかし、色とりどりのライトアップによってキラキラとした幻想的な雰囲気がある


確かすぐるは小説とか音楽なんかも作ってるんだったな?

この道をすぐるはなんて表現するんだろう?

ただあいつ、休日は家出ないって言ってたし。そもそもイルミネーション見ないか

・・・悲しくならないのかな、今度遊びに連れてこう


つむぎさんとイルミネーションで照らされた道をゆっくりと歩く


「今日、どうだった?」

「ん~啓介けいすけくんは?」

「俺は楽しかったよ。すごい楽しかった」

「そっか、私と同じ気持ちで良かった」


そう言ってもらえて良かった

少しの間、無言が続く

先に口を開いたのは俺だ


「そろそろ、帰ろっか」

「そうだね~また今度遊ぼうね!」

「OK、また電話で行く所決めよ」

「じゃね!」

「バイバイ」


会ったのはこれで2回目、ここで告白なんてしない

焦ってもいい事はないから

ゆっくりでいい


それぞれの駅に向かって歩き出す

いつか付き合えたらいいな

そんな事を考えながら

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る