第5話 遂に壊れたみたい

「ここはこの式を代入して、この解が出てくるよね」

「うぐぁ~!ムズイって、今回の数学の範囲!」

「それ毎回言ってない?今回は割と理解すれば早いよ?」


ということで、今日は家でパジャマパーティー!


なんてすると思ったか、男子校だぞ

いや、する奴もいるけど少数派だ。俺はしないしすぐる良哉りょうやもしない

今日は良哉りょうやの家でひたすら勉強をしに来た


すぐるくん、ここはこの前習った公式を使って答えを出すんだよ」

「あ、ちょっと待って・・・あ、出来た!よし!ありがとう良哉りょうや!」

「ごめん、良哉りょうや。この問題ってこの式であってる?」

「ちょっと違うね、啓介けいすけくん。これは判別式を使って値を求めるんだよ」


本当に毎回良哉りょうやのおかげで助かっている

良哉りょうやは学年でトップクラスに頭が良い

地頭が良い上に暇があれば勉強しているのだから当然ともいえる


そして俺も良哉りょうやにあやかって頑張って勉強して

何とか成績を高い位置でキープできている

もちろん良哉りょうやに敵った事は一度もないのだが


「ちょっと休憩しよっか、啓介けいすけ君もすぐる君も疲れたでしょ?」

「え、いいの?ありがとう」

「あぁ・・・撃沈」


すぐるが床に倒れこむ

HPバーはもうパラメータを振り切ってマイナスになってる

憐れだ、気持ちは分かるけど


「お菓子これくらいしかないけど大丈夫?」

「え、何それ!美味しそう」


そう言って良哉りょうやはポテトチップスを持ってくる

ただ、明らかに日本で売ってなさそうなパッケージだ

英語で書かれている、サワーオニオン?らしい


「ぁぁ~英語を俺に見せないでくれ、痙攣起こす」

「何言ってんだ、すぐる

「大丈夫?少し休んでて良いよ」

「うん、お言葉に甘えて一回眠るね。お休み」


そう言ってすぐるは寝てしまった

それを横目に俺と良哉りょうやはポテトチップスの袋を開けて

ポテトチップスを1枚掴んで食べる


「え、コレ美味しくない?」

「うん、僕もそう思う。親が好きらしくてネットで買ってるんだって」


味付けが濃いめで美味しい

何気にポテチを食べること自体が久しぶりだったから

いつもに増して美味しく感じる


「そういえばさ、康孝やすたかからなんかメッセージ来たんだよね」

「うん?なんて来てたの?」

「なんか、『優衣ゆいさんといい感じになれた♡』って」

優衣ゆいさん?誰かな?」

「多分康孝やすたかが好きな人、その人といい感じになれたらしい」

「そうなんだね!良い事だよ」


そう、それ自体は良い事だ

でもな、タカ

お前分かってるよな?


「でもあいつ、何で俺に送ってきたんだ!煽りだろこれ!」

「あはは、そうだね。僕も好きな人出来たらいいな」

「いや、良哉りょうやは頭良いしイケメンだからすぐ彼女できるよ」

「ちょっと、やめてよ~啓介君もかっこいいよ」


えへえへ、そうかなぁ?

褒められると素直に嬉しいな

まさか、これが恋!?


「それにしてもあいつ、許すまじ」

「まあ、啓介けいすけ君に好きな人とかできたら相談乗るよ。だから康孝やすたか君の相談にも乗ってあげなよ」

良哉りょうやお前マジでいい奴だな」


天は万物を与えず、という言葉に完全に反比例している人間がそこにいた

というか、人間じゃないな。神だな

あ~それなら納得納得

だって頭が良くてイケメンで運動も結構できて性格も良いなんて、そんな人間がいたら絶望しちゃうからな


「なぁ、啓介けいすけ

「うお、すぐる!起きてたのか」


そこには悲壮感溢れる表情のすぐるがいた

なんかすぐるは悲しそうな表情を良く見る

分かんないけど、元気出せよ


「俺悲しいよ、康孝やすたかくんがそうやって青春を謳歌している間、俺は意味分からない問題を必死こいて解いてるんだぞ?悲し過ぎるだろ」

「悲しいな、俺にもダメージ来たわ」

「貫通ダメージだおい」

「ついでに僕にもきたよ、それじゃあ勉強再開しようか」


ダメージが来たと言いながら無常にも良哉りょうやは勉強の再開を宣言する

すぐるの方を見ると


目がキマってた


「よし!勉強やろう!なんか数学楽しくなって来た!」

「あ、ほんと?それじゃあこのままと問題解いていこうね」

「あ、このポテチ食べてもいい?」

「良いよ、すぐる君も食べて」

「ありがとう!うわ、

「それやりたかっただけでしょ」


本来、すぐるはあまりお菓子を食べない

そのやり取りを見ながら俺も勉強を再開する

応用問題になるとだいぶ難しい、良哉りょうやに解法を聞こうか


「ねえ、この解法って何?」

「それはね、ここをこうするんだよ」

「あ、なるほど!分かったわありがとう!」

「大丈夫、分かんない所あったらまた聞いてね」

良哉りょうや、俺悟ったわ」

「どうしたのすぐる君、数学楽しくなってきた?」

「いや、楽しい」


相変わらずすぐるはキマった目で良哉りょうやと話している

可哀そうに、男子校で虚しくて遂には壊れたみたいだ

まあ、勉強をしたがっているし良い壊れ方だな


「あはは、この式はこうするのか!」

「あ、違う違う。この問題にはこの公式を当てはめて解いて」

「悟ったのに頭良くならないんだけど」

「頭の悪い発想」


悟ったら頭が良くなるは

流石のお釈迦様も救えないと悟るレベル


まあ、そんなことを言うのも野暮だし

俺も勉強頑張ろう

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