第2話 懇願による証明

「ご飯の時間だ~」

「授業終わったね」

「はよ食べようぜ」


4限目が終わり、お昼ご飯の時間になる

お昼ご飯の時間はいつもこの二人と食べる


一人は内藤良哉ないとうりょうや、良哉はめちゃくちゃ頭が良くて

良く分からなかった所を教えて貰ったりしている

しかも聞き上手で、良く俺の悩みを聞いてもらったりしてる


もう一人は小泉傑こいずみすぐる、傑は多趣味だが勉強は趣味ではないらしく

趣味に没頭しすぎて成績は大分悪い

唯一フィーリングで出来る現代文と副教科は抜群に良いらしい

俺としては退学とか留年とかしないか心配だからもう少し勉強して欲しいところだ


「二人は明日の休み何したの?」

「僕は特にやることも無かったし数学の問題集を進めてたよ」

「いや、良哉りょうや。休めよ、良哉りょうやは真面目過ぎると思う」

「逆にすぐるは勉強した方が良いぞ」

「そうだよ、僕が時間なくて教えられなかったらどうするの?」

「ごもっとも。すいませんでした」


本人も成績が悪いことは自覚しているようだが、友達としてはやはり心配だ

良哉りょうやすぐるはこの学校に入ってすぐのころから今の高1の時までずっと仲良くしている

俺にとっては親友といっても過言ではない。固い絆で結ばれてる

きっと二人もそう思ってるだろう


え、思ってるよね?


啓介けいすけは何したの?」

「ん?ああ、俺は小学校の時からの友達とカラオケ行ってきた」

啓介けいすけも遊んでるじゃん」

すぐるより成績いいから」

「グヌヌ・・・敗訴」

「弱いね」

「出直してこい」



すぐる負けってな

・・・は?


「それで、カラオケ行ったんだ?」

「うん、康孝やすたか美紀みきって覚えてる?」

「覚えてるよ、1年くらい前に会ったよね」

「俺その時康孝やすたかくんから話しかけてもらった記憶がめっちゃ頭に焼き付いてる」

「あの時のすぐるめっちゃ面白かった」


俺と良哉りょうやといるときは普通に話せているすぐるだが、

知らない人と話すのはめっぽう弱いらしく、驚くほど縮こまっていた

俺としてはあれはあれで面白かったけど、すぐるとしては恥ずかしかったのだろう


「いや、俺は陰キャなの!分かる?男子校は陽キャと陰キャの壁があんまりないせいというかおかげで、感覚マヒしてるだけなの!」

「あ~康孝やすたかも言ってたな、共学だとグループのこと1軍2軍とかって呼ばれるらしい」

「クラスに軍隊出来上がっててなんかシュールだね」


いわゆるスクールカーストという奴か

小学校はそんなの気にしたことも無かったし、中学入ってからはスクールカーストの概念があまりない男子校に通っているからかそれを気にしたことが無い


「本当だったら僕達は何軍になるんだろうね?」

良哉りょうや啓介けいすけは確実に上の方行くな。だけど、多分俺単騎で行ったら軍隊に入れずに一人だけになる」

「想像したら明らかに浮いてて草」

「そもそも軍に入れてないからな」


おっと、話が逸れ過ぎた

何の話をしてたんだっけ?

そうだ、休日何したかの話だ


「まあ俺も趣味のこと色々したな!」

「勉強しろ(定期)」

「そいえばだけどすぐる君、啓介けいすけ君、もうすぐ学園祭だよ」

「え、まじ!?つよい(確信)」

「そうだったっけ?じゃあ康孝やすたか美紀みきを学園祭に誘うか」

「学園祭の前に期末テストだけどね」

「「え”」」


あ、あああ

そうだ思い出した

学園祭が来る時期、余計なものが頼んでないのにセットで付いてくるんだった


すぐるはすでに絶望の表情を浮かべている

なんて言えばいいのだろうか、始まっても無いのにもう悲壮感が漂ってきている

かといって、俺もやばくないわけではない


期末テストはかなり復習しないといけない

だけど、一人でできるかどうかイマイチ不安だ

そんな時に取る選択はただ一つ


「「良哉りょうやさん!勉強教えてください!!!」」

「うわっ!ちょっと、あんまりおっきな声出すと驚くからやめてよ」


良哉りょうやに教えを乞う事

これは3年間強過ごして感じた一番大事なことだ

すぐるも俺が今言った言葉と全く同じことを全く同じタイミングで言っていた

それこそが一番大事といえる証拠だ


「うん、いいよ。でも自分でも勉強しないとだめだよ?」

「「はい!します、先生!」」

「なんか、息ピッタリだね・・・」


こんなに息ピッタリな懇願

親友でないと出来ないに決まってる!

やはり俺たちは固い絆で結ばれてるんだ!





なんかもっと他に友情を証明する方法無かったかなぁ・・・

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