第65話 コリンとの契約
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【レトル草】
薬草。
単にすりこぎでペーストにして傷口に当てると少しだけ止血効果がある。
※飲んだら毒なので、けして飲んではいけません。
※飲んだ場合、下痢、嘔吐などの症状が出る。
※飲み薬にするためには技術が必要。
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「ほほう。血を止めるだけなら結構簡単だね」
「わふ~」
「タロでもできる? ほんと?」
「わふぅわふ!」
タロはペーストにする自信があるようだった。
「……あいつはペーストにするだけで良いって言ったです」
「止血効果のある薬?」
「はいです。ペーストにするだけだから僕にもできるって思ったです」
だからコリンは張り切って、一生懸命レトル草を集めたのだ。
「みんなに、毒を飲ませるところだったです」
「……わふ」
落ち込むコリンをタロがベロベロと舐めた。
「僕は勇気もなくて、バカで……どうしようもないです」
みんなを治そうとコリンが薬を作って飲ませたら、みな苦しみ出しただろう。
体力を失っていた者なら命を落としてもおかしくない。
それを見たコリンは自分を責めただろう。心も折れたかもしれない。
落ち込むコリンにミナトは明るく言う。
「よかったね! 悪い奴のたくらみをふせげた!」
「わふわふ~」
「そ、そうだったです! 危なかったです!」
少しだけ笑顔が戻ったコリンをみて、ミナトは続ける。
「でも、ちゃんと飲み薬にもできるんでしょ? 作り方を調べてみよ!」
ミナトはサラキアの書のページをめくった。
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【レトル薬とその作り方】
レトル薬とはレトル草から作られた飲み薬。
効果は滋養強壮。病後の回復。
頭痛、関節痛の鎮痛。解熱、鎮咳など。
作り方
ゆっくりと魔力を込めながら、すりこぎ棒で丁寧にすってペースト状にする。
ペースト状になった物を、魔力を含んだ熱風で急速に乾かし固形にする。
神聖力を込めた綺麗な水を少しずつ混ぜて、再びペーストにする。
ペースト状にした物を熱と神聖力を加えて固めつつ、小指の先の半分ほどの大きさに丸める。
神聖力を込めた風で急速に乾かせば完成。
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「結構難しいね?」
ミナトは頭の中で工程を想像する。
「あーやって、こーやって、ふむ……ふむ? むずしいけどできそう?」
「魔力とか神聖力とか、僕にはできないです……」
「わふ~」
がっかりしたコリンを慰めようと、また、タロがベロベロと顔を舐めた。
「ぴい~」
「うん、僕は神聖力とか魔力とかだすの得意だけど」
「ぴぎっ?」
「そう。僕が作ってもいいのだけど……」
コリンは自分で作りたいだろうとミナトは思ったのだ。
「わふわふ~?」
「あっ! そうだね! タロ頭良い!」
「わぁぅ!」
「コリン、僕と契約する?」
コリンはきょとんとして首をかしげる。
「契約です? なんなのです? それは」
「えっとね、契約っていうのは使徒が精霊や聖獣に名前をつけて友達になることだよ!」
「ぴぃ~」「ぴぎ~」
「そだね。ピッピとフルフルの言うとおり! 契約すると使徒も精霊や聖獣も強くなるんだ」
「ほえー」
ミナトも、精霊、聖獣たちもステータスが向上したりスキルを手に入れたりできる。
「僕も契約できるです?」
「コリンは半人半聖獣って、サラキアの書に載ってたし、多分できると思う」
「ほえー」
コリンの目が少し輝いた。
「僕が貰えるスキルは色々なんだけど、聖獣が手に入れるスキルは解呪とか瘴気払いなの」
「解呪と瘴気払いです? それってどういう?」
「えっとね。解呪っていうのは」
ミナトは丁寧に説明していった。
「解呪も瘴気払いも神聖力を使うから、薬作りにも役立つかも?」
ミナトがコリンに契約しないかと言い出したのは、これが理由だった。
「わふ~?」
「あ、そうだね。サラキアの書で本当に役立つか見てみよう」
そういって、ミナトはサラキアの書を開いた。
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【契約した聖獣、精霊と神聖力】
もともと聖獣、精霊は神聖力を持っている。
使徒との契約により、その神聖力は強化される。
※製薬に使えるかどうかは練習次第。
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「練習次第だって」
「つまり不可能じゃないってことです?」
「そうだね! 契約する?」
「ご迷惑じゃないです?」
「全然迷惑じゃないよ!」
「わふわふ~」
「ミナト、タロ様……ありがとうです」
遠慮していたコリンも「タロに契約しよ!」と勧誘されて、ついに同意した。
「あ、契約には名前をつける必要があるんだけど、もうコリンは名前もってるもんね」
「はいです」
「こういう場合どうすれば良いんだろ?」
そういって、ミナトはサラキアの書を開く。
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【名前を持つ聖獣、精霊との契約の際の名付け】
1、その名前を改めてつける(例フルフル)
2、新しく別の名前をつける。
3、ミドルネームやファミリーネームの要領で名前を加える。(○○→○○・□□)
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「あ、そっか。フルフルも元々フルフルだったね?」
「ぴぎ~」
何十年も前にフルフルと名付けたのは、幼少期のリチャード王だ。
「これで、問題はかたづいた……」
ミナトが厳かに言うと、
「わふ~」
タロも厳かにお座りして尻尾を揺らした。
「は、はいです。よろしくです」
「じゃあ、契約いくよ! 君はコリン! よろしくね」
ミナトがコリンに触れて、宣言するとピカーッと光って契約が終わった。
「おわったです?」
「うん! 終わったよ! よろしくね! なにか変わった感じある?」
「なんか、強くなった気がするです! それに瘴気を払えそうな気がしてきたです」
「そっかー」
そんなことを話していると、ジルベルトが遠くから声をかけてきた。
「ミナト、タロ様、それにコリン。話合いが終わったから来てくれ」
「わかった!」「わふ」「わかったです!」
神像作りのための泥と薬作りのための薬草をその場において、ミナトたちは走り出した。
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