劇場版『シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』は覚悟の序章

隅田 天美

観た時の感想

 四年前、突然、『シティーハンター』がテレビスペシャルを最後に二十年以上の時を経て、劇場公開されるとネットなどでいきなり情報が出た。


 だが、情報が小出しで主人公の声をしていた神谷明氏は第一線から引いて大分経つ。


 ところが、キャストは当時と同じ、エンディングはTM NETWORK(これでいいのか?)の『GET WILD』、当時のスタッフも集めるだけ集めた。


 それでも、ファンの中には不安があった。


 何しろ、二十年である。


 世界も世の中も人生観すら変わった。


 そして、『シティーハンター プライベートアイズ』が公開されて誰もが驚いた。


 世界観などはそのままにシティーハンターは、ほぼ完ぺきな形で(無理なところもあったけど)甦った。


「そうだよ、これだよ!」


 昨今の未消化気味の設定盛々の複雑な話は無い。


 そこには冴羽リョウ(漢字が出ない)、槇村香、海坊主、美樹さんなどがいた。


 

 それから、四年。


 また、いきなり『シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』の劇場公開が発表され、しかも、エンジェルダストという言葉と、ラスボスが海原神という話に原作ファンはさらに驚いた。


 原作の終わりにほぼラスボスとして登場する『海原神』は戦場での生き抜く術を教えた師匠に当たり、同時に彼の人格に大きく影響を及ぼした重要人物だ。


 エンジェルダストは、色々あって人格のぶっ壊れた海原が自分を慕う『息子』と呼んでいたリョウに投与して一個師団を壊滅させた麻薬(まあ、今の倫理などで映画ではナノマシン)である。


 正直、これを原作通りにやるとなるとどんなに優秀なスタッフでも五時間は欲しい。


 トールキンの「指輪物語(三時間以上の上映時間)」でもギブなのに、五時間は精神が疲弊する。

 お尻も痛い。


 だから、スタッフたちは色々改良した。


 本来、登場しない「キャッツアイ」を登場させ、出だしから「自分たちは自分たちの最終回を書く」と無言の宣言する。


 大抵の映画化の失敗は作品を下手にいじって『俳優の無駄使い』などとネットでいじられる。


 だが、総監督のこだま監督は、このシティーハンターを知り尽くしている。


 だから、最初はほぼ違和感はない。


 だが、途中から私ですら「うん?」となり終盤は「え!?」となった。


 はっきり書くと、今回の話はハッピーエンドではない。


 人によってはこの後味の悪さに拒否感が出るかもしれない。

(映画、ハードボイルド系の映画をたくさん見ている人なら逆に納得できるかも)


 実際、私の周りでの評判は二分され、「最高」と「どーもなぁ」という二つに分かれる。


 声などは「慣れろ」としか言えないが、ストーリーに関しては私は制作陣の覚悟を見た。


 確かに前作『プライベートアイズ』が後味のいいハッピーエンドだったからこそ、ファンは落ち着いてみていられた。


 だが、今回の『天使の涙(エンジェルダスト)』はリョウの過去に重点が置かれる。


 今までのテレビや原作の『スーパーマン』ではない「冴羽リョウ」と名乗る男の思いや過去の話だ。


 私が観ている『ワイルドスピード』の主役・ドムを演じ、スタッフでもあるヴィン・ディーゼル曰く「伝説には終わりは必要だ」


 人は何時までも生きることはできない。


 いつか色々なお別れがある。


 永延に前作、今作のようにほぼパーフェクトな布陣で劇場公開はほぼ無理だ。


――最高の作品の最高の最終回を観たい。


 この文章はもちろん、映画の感想を頂けると今後の小説などへの糧になるような気がするのでよろしくお願いします。

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劇場版『シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』は覚悟の序章 隅田 天美 @sumida-amami

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