第231話 しりとりしよう!
「なぁなぁ、ボクらなんかやらかしたかなぁ?」
両津は落ち着かない様子で、不安げな視線をひかりに向けた。
職員室に呼び出されたのは三人。両津とひかり、そしてマリエだ。
「両津くんは常に、何かやらかしてる気がするよ」
「そんなアホな!」
ひかりの指摘に、両津は首を左右にぶるんぶるんと振った。
「なんもしてへんて!」
「そうかなぁ」
首をかしげるひかり。
「ソウカナァ」
マリエがひかりに続いて復唱する。
「ボクが何やったって言うねん?!」
「えーと、三時間目の授業中に、隠れてお菓子食べてた」
「四時間目の授業中、居眠りしてた」
「体育の時、女子更衣室覗いてた」
「南郷教官の悪口言ってた」
「遅刻した」
ひかりとマリエから機関銃のように、両津有罪の証拠が挙げられていく。
「教科書を寮の部屋に持って帰らずに、教室の机に置きっぱなしにしてる」
「学食の定食で、おかわり自由のご飯を取りすぎて残してた」
「保健で、女子だけの教室を覗いてた」
シャキーン!と、両津は直立不動で、気をつけの姿勢になる。
「すいませんでしたーっ!」
ガクッと、90度に頭を下げる。
「ううん、私別に怒ってないよ」
「ホンマに?」
「うん。でも、奈々ちゃんは怒ってたかも」
「あちゃ〜」
その時、職員室から南郷の声が響いた。
「両津くん!入りなさ〜い!」
「はいっ!」
両津はぎこちなく立ち上がると、職員室の引き戸をガラガラと開けた。
「こっちや」
南郷に招かれるまま、彼は職員室へと消えていった。
首をかしげているひかり。
「ねぇマリエちゃん、これって何の呼び出しだと思う?」
マリエも首をかしげる。
「謎」
しばしの沈黙。
「ねぇマリエちゃん、両津くんがいなくなって退屈だからシリトリしよっか?」
「うん、それがいい」
二人、楽しそうに微笑む。
「じゃあね、ロボット部のみんなのロボットさんの名前から始めよ!最初はね……奈央ちゃんのロボットさんの名前で、コスパ!次はマリエちゃんだよ!」
「ぱ、ぱ、ぱ……」
少し悩んでいるのか、マリエが頭を巡らせた。
「……パン」
「マリエちゃんダメだよ、最後に『ん』が付いたら負けだよ」
「それじゃあ……パン屋さん」
「また『ん』で終わったよ、マリエちゃん」
「あれれ」
そして楽しそうに笑い合う二人。ひかりとマリエは、とことん気が合うようだ。
「じゃあひかりは、両津くんのなにわエースの『す』」
「えーとえーと、スリッパ!」
「パン」
「『ん』が付いたよ!」
「パン屋さん」
一瞬の間が開いて、大爆笑する二人。
これではすぐに終わってしまう。
だが、ひかりとマリエにとっては、とても楽しい時間なのであった。
「あのぉ南郷センセ、ボク何か呼び出されるようなこと、やってまいました?」
「ちゃうちゃう」
南郷は顔の前で右手のひらを左右に振った。
「新任の山下センセが、生徒のひとりひとりと話がしたいって、そう言いはるんや」
「ごめんなさいね。私が無理を言って、あなたを呼び出してもらったの」
サラサラの黒髪ロングを揺らしながら、美咲が両津に微笑みかける。
「はぁ」
両津の頬がなぜかポッと赤くなった。
「おい両津くん、どうして赤くなるんや?」
南郷がニヤニヤした笑顔を両津に向ける。
「赤くなんてなってまへん!ちょっと室温が高いだけです!」
「なっとるやん」
南郷が、そのニヤケ顔を増々深めていく。
「南郷さん、そのくらいにしてあげてください」
「まぁ、そうでんな」
美咲の声に、南郷が苦笑した。
「じゃあね両津くん。ちょっとお話を聞かせて欲しいの」
「はいっ!何でもお話します!」
直立不動の気をつけだ。
「おい、俺の時と返事が違いすぎるやろ!」
当たり前やん。
両津は心の中で苦笑していた。
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