いずれ最強へと至る道〜底辺召喚士は『童話召喚』の力で成り上がる〜

張田ハリル@m9(^Д^)気分次第だぜ!

第1話

 水が顔に当たる……ああ、これは雨か。

 ボヤーっと眩む視界……そこに入る微かな光。日光などでは無い淡く、息を吹きかければ消えてしまいそうな光だ。






 ……雨では無かった。俺の顔に当たっていたのは岩肌から滴る水滴、こんなものに目を覚まさせられたのかと少しだけ嫌な気持ちになった……が、そんな気持ちはすぐに吹き飛んだ。


「ここは……どこだ……?」


 俺は……日本で暮らしていたはずだ。

 日本にこんな洞窟なんてあったか。いや、知らないだけであるにはあるのだろうけど……はぁ、そんな事を考えるのは時間の無駄だな。


 思い出せ、もしかしたら何かあったのかもしれない。それこそ、酒に酔って変な場所にいましたとかはネットでよく見る話だ。それと同じで変な場所まで来てしまった可能性も……いや、それは確実に無いか。


 もっと言えば何も思い出せやしない。

 何も思い出せはしないというのは語弊があるか。佐々木亮太、この名前だけは思い出せて後は違う記憶だけが蘇ってくる。リヒトという名前、魔法学校生であるという事、虐めれていた事、そして虐めの延長線上でこの洞窟で魔法の試し打ちにあい、殺されてしまったという事。


 最悪……ではあるが俺としては悪い話では無いのかもしれない。もちろん、良い話とも言い切れないけど日本にいた佐々木亮太という存在は死んでしまって、リヒトという存在に俗に言う転生をした可能性もある。


 死んでしまって転生……日本のライトノベルのジャンルである『なろう系』ではよくある話だったはずだ。二度目の人生を与えて貰えたとなればリヒトという存在がどんな扱いをされていたとはいえ、感謝するべきだろう。だけど……。


「転生するのならチート能力全振りの方が嬉しかったな」


 リヒトが虐められていたのは召喚士でありながら従魔と呼ばれる、仲間にした魔物を一体も作れず、ステータスと呼ばれる個人の力を数値化したものも圧倒的に低かったからだ。逆に聞こう、こんな体に転生したいと誰が言う。


 はーい、ここにいる佐々木亮太君でーす。

 実際問題、ワクワクしている。恐らくだけどゲーマーか何かだったのだろう。どうせ、やるのなら圧倒的に強いか、圧倒的に弱い方が楽しめるって考えがどこかにあるんだ。これは記憶というよりは本能に近いかもな。


「って事で、ステータスオープン」






 ____________________

 名前 リヒト

 職業 召喚士LV6

 年齢 10歳

 レベル 8

 HP 150

 MP 100

 物攻 55 物防 55 魔攻 30

 魔防 55 速度 40 幸運 100

 固有スキル

【童話召喚】

 スキル

 魔法

 従魔

【※※※※】

 ____________________






 うーん、これは確かに酷い数値だな。

 八歳であれば……物攻から速度までは百は無いと駄目だし、体力を表すHPや魔力を表すMPは三百が平均的だ。幸運の最高値が百だからそこだけは良いけど……いや、記憶が正しければリヒト自体は幸運が二十だったはず。


 ……転生の影響で多少の変化があるのか。

 ま、まぁ、仮に変化があったとしても雑魚は雑魚であり、無能と言われるのも無理は無い。となれば、俺ができる事は使えそうなところを利用して強くなる事。強くならなくとも生きていくために使える要素を見つけないとな。


 まずは……召喚士。ただ従魔が作れないという過去の記憶からしてアウトだ。召喚士は多数の魔物を配下に付けられるという点から偵察隊として必要とされている。それに従魔のステータスの一部が主のステータスに追加されるからな。そこら辺で従魔が作れないという事は弱ステータスというデメリットしか残らないから最悪だ。


 では、童話召喚……これは記憶が正しければ童話に関わる従魔を召喚する固有スキルだったはずだ。スキルの中でも唯一無二の性能を持つスキルを固有スキルと呼ぶらしいが……名前からして強そうなイメージは無い。


 童話って絵本とかに書かれている話だろ。それらの登場人物を召喚できるとして……何が強いって言うのだろうか。まぁ、いいさ。今は最後の頼みの綱であるバグっている名前を……。






 ____________________

【赤ずきん】

 赤い頭巾を被った少女。自身の祖母を殺した狼という種族を強く憎んでおり、その赤い頭巾は得物としている猟銃で殺し尽くした狼達によって染まったとも言われている。

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 間違って欄に触れてしまっただけ。

 本来、ステータスには触れられないはずだ。触れられるにしてもステータスカードとかの何かしらの物体を通さなければいけないはず……いや、そこは今はどうでもいい。


 赤ずきん……それと何だこの説明は。

 ソシャゲか何かか……それ以前にステータスカードで見た時だって全ての字が読めなかったはず。もしかしてだが、この文字だけは異世界の文字ではなく日本語で書かれていたから読めなかったとか。


 いや、それならリヒトって子、可哀想じゃないか。本当は従魔(人間の女の子)がいたのに無能扱いされていたとかさ。もっと言えば童話召喚で出す従魔だけが使役できるとすれば謎の制約も納得がいくし……。


 はぁ……一先ず、召喚してみようか。

 考えていても何の得にもならない。それに今いる場所に魔物が来ない保証も無いんだ。戦える存在はいるに越したことは無い。例えそれが非力そうな赤ずきんだとしても、だ。


 召喚方法は確か……。




「我の望みに応えよ、赤ずきん……で、いいのか」


 瞬きをする、その時には既に目の前にいた。

 赤い頭巾を被った少女、だが、その説明にあったような頭巾には血の影など見えない。幼さが残る外観に、どこか美しさを感じるような甘い柔らかさがある……そんな少女だ。


「マスターの望みに応えて参上しました。私の名前は赤ずきん、どうぞ、末永く、よしなによろしくお願いします」


 そう言って少女は小さな笑みを咲かせた。

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