エンタメは文学作品として低俗なのか

 以前、興味深い自主企画を発見しまして。その内容とは、書き下ろした作品の文学的性質が いずれに偏っているのかを、読み手が判断するというものでした。


 私も参加こそしなかったのですが、批評系のデータを集めている者として、参加作とコメント欄を拝読させていただいたのですが――。



 結構な頻度で「エンタメにならないように気をつけた」「頑張ったけど結局エンタメになってしまった」といったやり取りを目にしてしまったんですよね。


 なかには、まるで〝ドボン〟してしまったかのような無念さや悲しみまでもが垣間見える、そんなやり取りも散見されました。


 個人的には、これがなかなかにショックでして。なにせ私が執筆している作品は、紛れもないエンタメ作品です。それに私自身、レビュー等で作品を称える際にも〝エンタメ〟という表現は頻繁に使用しております。


 もしかして〝エンタメ〟とは称える言葉とは真逆の低俗な意味を持つ言葉として、使わない方がよい言葉だったのか――と。


 またしても「やらかした」のかと思ってしまった次第です。



 この〝切れッ端〟でも散々述べておりますとおり、レビューにまつわるトラブルは後を絶ちません。究極、レビューは二度と書かない方が良いのかもしれませんが、そうした消極的な行動は伝播しやすいものです。コンテンツの衰退を招きます。


 なので、いくら難しくとも続ける必要があります。それに私自身、レビューが無いと「受け入れられていないのかな」と不安になってしまいますし、頂戴すると嬉しいですからね。いただいたレビューが退会やBANなどで取り上げられてしまった際には、精神に埋まらぬ穴を穿たれた気分でした。


 ◇ ◇ ◇


 そもそも、純文学の定義が曖昧であるのと同様に、エンタメの定義も曖昧です。私の基準においてエンタメとは「私自身が読んで面白かった作品」を指します。面白いの基準も細分化するとキリがないのですが、「笑えるもの」に限らず「強く心を動かされたもの」や「新たな見識が広がったもの」なども含みます。


 私が拝読中の作品にもギャグに振り切った作品があるのですが、現在の私のような、疲弊した精神状態であっても楽しく読み進めることができます。そうした意味でエンタメとは決して低俗なものではなく、とても愛と優しさに溢れたコンテンツであるともいえますよね。



 おそらく、自作がエンタメになることを避けたがっていた方は、エンタメの基準が「安易に消費可能な大衆的な作品」という位置づけだったのではないかなと。


 「安易に消費可能な大衆的な作品」とは、読み終わったあとに手を叩きながら大笑いし、「他には他には?!」と言いながら、読み終えた作品を即座に投げ捨ててしまうイメージですね。読んだ瞬間に一過性の快楽を与えるだけで、読み手の心には残らない。笑えるかどうかは別として、私が書いている、この〝切れッ端〟も含みます。



 どうにも、そうしたエンタメ扱いを嫌がる方には、作品を通じて絶対に伝えたい信念のような、高いプライドが垣間見えるのです。「適当に書いてます」などと表面上でいくら謙遜したとしても、何気ない言葉の端々に、そうしたプライドは表れます。


 別に、これは悪いこととは思いません。私自身も誇りを持って作品を執筆しておりますし、明らかな〝営業〟などで中身のないコメントを頂戴すると、少なくない敵愾心を抱いてしまいますからね。「続きが気になります!」などと書かれて放置されてもスルーしますが、さっさと無言で★を付けていただければお返しに伺いますとも。ああした営業コメントで、私の作品を穢さないでほしい。


 ◇ ◇ ◇


 大幅に話が逸れましたので、締めに入ります。


 今回のエンタメを巡るやり取りを見て、言葉というのは本当に難しいものであるなと、改めて感じた次第でございます。


 私が良い意味で使った言葉でも、受け手にとっては侮蔑とも取られかねないのは、悲しさを感じると同時に――これは仕方のない部分もあるかなと。


 言葉が誰にとっても不変的な意味となってしまっては、それこそ「小説の正しい書き方」のようなものが固定化されてしまいますからね。書き手それぞれの、思う世界を描いてこその小説です。


 どれを読んでも同じものになってしまえば、それこそAIが書いた小説になってしまいますからね。たとえAIが小説を書いたとしても、私のミストリアンクエストは、私にしか描けません。だからこそ、人間である自分自身が言葉に向き合い、執筆を続ける必要があるのです。


 そういったわけでして。私からの「エンタメ作品です」という文言は、今後とも称賛の言葉として使わせていただくと、ここで明言させていただきます。

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