私は籠を揺らす
雪幡蒼
プロローグ 私は死んだ
ピーポーピーポー……
人々が暮らすごく普通の町。
近隣には学校や病院に商店といった施設が揃っており、人々も普通に生活していた。
そんな町の中、救急車がサイレンを鳴らしながら駆け抜けていく。
朝という時間にも関わらず、空はどんよりと薄暗く、そしてしとしとと雨が降っていた。
その救急車の行く先には、ガードレールを突き破った一台のトラックが歩道に乗り上げていた。
周囲の人々は何やら叫び声をあげ、警察官が中に入らないようにと封鎖ていた。
トラックの運転手は意識を失い、車の前方は見るも無残に破損していた。
そして、その先には血まみれになった少女の身体が押しつぶされていた。
雨はその少女の身体にも降り注ぎ、それが血を流し、路上は血の海だった。
恐らく肉片どころか骨まで粉々だろう。内臓も露出してしまい、もう治療の術はない。
救急隊員は運転席にいるドライバーを担架で運び、救急車へと乗せていく。
彼はまだ息がある。今からでも手術をすれば助かる可能性はあるだろう。
しばらくして、事故処理車が歩道に乗り上げたトラックを引っ張って動かすが、その先の少女は見るも無残な姿で息絶えていた。
その姿を見た救急隊員や警察官までもが驚きを隠せないほどだ。
ちぎれた手足、はみ出した内臓、押しつぶされた顔、ところどころ露出する白い骨。
それらが全て真っ赤な血で染まっていた。
少女が着ていたセーラー服も、もはや元の色がわからないくらいに赤い血が染み込んでいた。
少女の傍にはつい先ほどまでさしていたであろう傘が開いたまま路上に落ちていた。
警察官が現場検証の為に少女の遺体の周りを調べ始める。
周囲の人々もまた、あそこで何が起きたのかと騒いでいた。
そんな大惨事を人込みの後ろからある者がその現場の様子を見ていた。
「ああ、私、死んじゃったんだ」
少女がそれを理解するのに時間はかからなかった。
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