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翌日。いつもの食事を取る場所に座っていたペペとルシフェル。
その二人の前には魔力で作り出したモニターと横に立つアルバニアの姿があった。
「ペペ様のご命令通りクラガン帝国に属していない付近の国を調べた結果。最初はこの国がよろしいかと思います」
彼女の言葉の後、モニターには一つの国が映し出された。
「サードン王国。クラガン帝国の同盟の申し出を拒みながらその侵略をも退けている国です。サードン一族が代々治め現国王はクレフト・サードン」
モニターの映像はサードン王国外観からクレフト・サードンへと変わった。
王冠を頭に乗せ長く伸びた白髭に覆われた口、経験の分だけ刻まれたような無数の皺。威厳のある王様というのがピッタリ当てはまるクレフト・サードンへと。
「サードン一族は元々、一国の民に過ぎませんでした。ですが当時の暴君へクーデターを起こした際に革命軍を率いていたアルド・サードンがそのまま王位に就き、そのままサードン王国の王族として国を治める立場となりました。その経緯によりサードン一族は王族ではありますが、民に寄り添うことを家訓としているそうです。それは現国王クレフト・サードンも例外ではなく、故に彼ら一族は民からの信頼も相当なものだとか」
「良い王様なんだ。確かにそう言われればそう見えるかも」
「そしてこの国の騎士団を現在指揮するのは、ミシェル・V《ヴァル》・スウィングラー」
そしてモニターはクレフト・サードンからミシェル・V・スウィングラーへと変わった。
マント付きの鎧を身に纏い堂々と前を見据えた双眸のポニーテールの女性。騎士団団長にしては若い気もするが、その凛々しい顔にはそれを感じさせないような雰囲気が漂っていた。
「最年少で騎士団の団長を任される程の実力を有していますので、ペペ様の配下としては申し分ないかと思います。ちなみにですが、前騎士団長は彼女の父親であるヴァレリー・スウィングラー。彼は現在騎士の教育係として新人育成をしているようです」
「なるほど」
頷きながらペペは興味深そうにモニターを見つめていた。
「ですがクラガン帝国がここを落とすのも時間の問題かと思われます」
「最年少の騎士団長か。良い響きだね」
「その実力がどれほどかは分かりかねますが、国を守る騎士団の長という役職を最年少で任されているのでそれなりの実力はあるかと思われます」
「それじゃあその人に魔力を与えれば魔族も相手に出来そうだね」
一人座りながら軽く殴るジェスチャーをするペペ。
「その可能性は高いかと」
「よし! じゃあまずはそこにしよう」
「では決行はいつにいたしましょう?」
「早いに越したことはないしいつなら行けるの?」
「既に準備は済ませておりますので今すぐにでも」
その返事に視線はルシフェルへ。
「ルシフェルは?」
「いつでも大丈夫です」
二人の返事を聞いてから腕を組み少し考え始めた。
「じゃあ行こうか」
「かしこまりました。ではサードン王国付近までゲートを繋いでおりますのでこちらへ」
アルバニアに連れられ広間に行くとそこには大きなゲートが設置されていた。表面では魔力が揺れているそのゲートは異世界に繋がっていそうな雰囲気を醸し出している。
「こちらです」
「準備万端じゃん。ありがとう」
「いえ、これぐらい当然の事ですがペペ様からのお言葉、ありがたく受け取らせていただきます」
嬉しそうに笑みを浮かべたアルバニアは会釈をひとつ。
「それじゃあ行こうか。サードン王国へ」
そしてペペを先頭に三人はゲートを通過。
その向こう側で三人を待ち受けいた景色は、どこまでも続く広大で綺麗な草原。温かな陽光が降り注ぎ心地よい風が吹く長閑な草原だった。
「ペペ様こちらです」
そんな草原を眺めていたペペだったが、後ろからアルバニアに呼ばれ振り返る。
「こちらがサードン王国です」
「わぁーお」
思わず感嘆の声を口から零したぺぺが見上げる先には左右に伸びる立派な城壁と城門があり、それだけで十分に威厳を感じさせまるで訪問者に対しサードンという国の力を見せつけるような存在感を放っていた。
「立派だなぁ。うちにもこんなの欲しいなー」
「ペペ様がお望みでしたら」
ここで勢いに任せて「欲しい」と言えば本当に作りそうなので、ペペは一度落ち着いて考えてみた。山の上にある魔王城に城壁がある姿を。
「――やっぱり今のままでいいかな」
「かしこまりました」
そんなやりとりをしていると強固な門が音を立てて開き始めた。自ずと三人の視線は城門へと向けられる。
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