仮初の雁
MutagenicityReactor
第1話
私は雁です。しかし私は私です。私を雁と決めたのは、何でも人間という生き物だそうで。これはこれは厄介な生き物なのです。私達の居場所を壊したり、作ったり。そんなことばかり繰り返しているのです。それもそのはず、人間という生き物は個体のエラーを悪しとせず仲間同士で慰めたり、逆に蔑んだりするそうで。私達はね、人間なる生き物がそんなすったもんだを繰り返しているなかで滑り台を滑るのが楽しいと気付いたり、その滑稽な人間たちが動かす鉄の塊に胡桃を割らせたりして知恵をつけました。関係があまり感じられないと申しますか。何も関係が無いと言えばそれまでですが。いや貴方、そこで話は終わりじゃないのですよ。人間は私達の偽物をつくって遊んでいるようなのです。狸なんかより余程出来の良い真似っ子カラクリ人形を、それも、私達のです。いきなり真似をされては気味が悪い。それはそれはクリソツでしたとも。しかしね、どうも妙なんです。最初は同類が他の地からやってきたんだと思いましてね、受け入れてやろうかやるまいか仲間と相談しておったわけです。ここは何処か。“奴”はそう言いました。言いましたとも。ここが何処か、そんなこと気にする雁など居やしません。何処だってやることやるだけ、それがやれるかどうか、それだけなんです。また良からぬものをつくって私達を惑わそうとする人間達。いやはやどうしてこうも厄介なものをつくるんだろうか人間という生き物は、、、
と、ここまで話しかけたところで彼の焦点は外界から味気の無い居間に戻った。
「もう戻ったか」
「効きは悪くないが少し変拍子が過ぎる」
「プログレッシブは古いか、それとも」
「理屈無き世は秩序に欠ける」
「しかしその上で、サイケデリックで有りたいと願うのみだな」
「もちろん」
非合法と光に満ちてこの二人は、幻獣をも凌駕する神秘性を持ち合わせていた。
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