第2話 サイコパス男と頭のいかれた女

 ひとみと交際している男についても、いい噂は流れていなかった。


 谷彦はナンパ癖があるのか、いろいろな女に手を出す。ほとんどは交際中の女で、他人の幸せをぶち壊すためにやっているかのようだった。クラスメイトの中では、サイコパスではないかと噂されている。


 当初は騙されるケースもよく見られたけど、最近ではほとんどなくなっていた。谷彦が接近しようとするだけで、距離を取るようになった。彼に心を許すのは、頭のねじの外れた女くらい。学校内において、まともな女と付き合うのは不可能である。


 谷彦は堂々とした態度で、ひとみのお尻に触れる。


「ひとみ、とってもいい体をしているんだな」


「谷彦君。ありがとう」


「女に生まれていたら、おまえのようにかわいくなってみたい」 


 谷彦は交際していたすべての女に、同じセリフをいっていた。彼の中においては、決め台詞さながらとなっている。聞いている側としては、かっこいいという印象は受けない。


「最高の誉め言葉だね。私はとっても嬉しいよ」


「ひとみ以上の女は、社会に存在しないよ」


 ひとみは気分がよくなったのか、


「好きな部分にどんどん触っていいよ」


 といっていた。単純思考の脳は、お世辞なのかを分別する力もないらしい。


「そうしたいところだけど、俺はとっても忙しいんだ。これでおさらばするよ」 


 ひとみは甘い声を発する。浮気現場を目撃したからか、気持ち悪さだけを感じることとなった。


「明日も一緒にいようね」


「ああ、約束する」


 谷彦はよほど慌てているのか、全速力でダッシュしていた。ひとみはすごいスピードで走る男に、柔らかい視線を送っていた。

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