五股女に別れを告げたあと、ストーカー被害に遭ったことのある女性になつかれました

のんびり

第1話 浮気現場を目撃

 人通りの少ないところで、近藤谷彦、菊谷ひとみが二人で会っていた。谷彦はクラスメイト、ひとみは現在進行形の彼女だ。


「ひとみ、大好きだよ」


「谷彦、大好きだよ」


 二人は思いを伝えあったあと、軽いキスをして、体を合わせた。伊藤巧は動揺することなく、様子をカメラに収める。


 恋人が浮気をしているのに、こんなに堂々としていられるのは、愛情を完全に失ってしまっているから。ひとみは自己中心的な女で、他人を思いやる気持ちは一ミリも持ち合わせていなかった。今となっては、どうしてこんな女と交際したのかを後悔するレベル。たった一度の人生史に、強烈な泥を塗ってしまった。


 浮気の情報を耳にしたのは、一カ月くらい前。巧はクラスメイトから、他の男と絡んでいると聞かされた。


 第三者から浮気の話を聞かされたときに、こいつならやりかねないと思った。自分の承認欲求を満たすためなら、どんなことだってやり遂げる女。自分だけの世界を生きているかのような女である。


 浮気の証拠を突きつければ、すぐに破局できると思われる。地獄さながらの日々から解放されれば、安定した日々を送れるようになる。


 巧のいるところに、弘が近づいてきた。小学校時代からのクラスメイトで、心を許せる数少ない存在である。


 身長は190センチを超えている。巧と比べても、頭一つ分くらい抜けていた。


「ひとみという女は節操がないな」


「まったくだよ。本能のままに生きているって感じだ」


「あいつとはどうするつもりだ?」


「すぐに別れようと思っている。あいつと一緒にいたら、運気はすべて逃げていきそうだ」


 弘は鼻で息を吸った。


「あんな女と交際したのは、どうしてなんだ」


「死ぬまで彼女なしは嫌だったから・・・・・・」


 死ぬまで彼女ができない=誰からも必要とされていない悲しい男。そのように考えていたため、交際を申し込んできた女にOKの返事を出した。


「そうだとしても、人をもっと選べよ。あいつはクラスで、最低の評判だぜ」


 弘の指摘はもっともで、反論する余地は一ミリもなかった。


「今度からはそうする」


 弘は学校の時計を確認する。


「部活に行くから、これでおさらばするよ」


 弘はバスケットボール部に所属し、一年生からレギュラーをはっている。身長もさることながら、プレイスキルも優れているのは確実。巧はどちらかというと運動苦手だったので、スポーツのできる男は羨ましい。

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