おちり好きによる月見談義?

砂上楼閣

第1話

「今日もいい月だねぇ、ピー助」


今日も私は愛鳥のピー助を愛でていた。


毎日の日課で、スマホのカメラを向けて何度も何度もボタンを連打する。


「ポゥ」


キジバトのピー助はいつも通りのダンディズム。


クールなことに、こちらを一瞥すらしない。


優雅にテーブルの上のリモコンに寄り添ってリラックスしてる。


せっかくの放鳥中なのに。


だが、それでいい。


なぜなら今、私がいるのはピー助がいるガラステーブルの対面、ではなく下だから。


寝そべりながら、ピー助を真下から見上げているのだ。


うーん、今日も綺麗な羽根の下に隠されたもふもふもあんよも、そして何よりおちりが最高だよ!


「いいよいいよ〜、最高だよ〜」


私はガラス越しにピー助に話しかけながら、何度も何度も角度を変えて、おちりにスマホを向けてはボタンを押す。


私は自他共に認める鳥のおちり好き。


SNSではよそ様のおちりにも愛を囁き過ぎて、オチリストとかオチリスキーとかおちりマイスターとか呼ばれているけど、私なんてまだまだ。


ふふふ。


おちりはいいぞ。


お手入れ後のもふもふなおちりも、水浴び後のびそびそなおちりも、なんならフンが付いてるおちりだって。


おちりはどんな時だって素敵なんだ…。


そう、それはまさに毎日毎日姿を変えてゆく月のごとし!


はっきりとした月だって、朧げに見える月だって、半分だろうが三日月だろうが、なんなら新月だって、月は素敵でしょう?


つまり、おちりは月そのものと言っていい(暴論)。


「月が、綺麗ですね…!」


I loveおちり!


私はおちりを愛している!


ピントが合ってなくたって、枝で隠されてたって、それもまた風流。


雲に覆い隠された月を想像して無聊を慰めるように、見えないおちりもまた、良き…!


YES!おちり!


もちろん可愛いあんよもお顔も、スサーした時の翼も大好きなんだけどね?


ーーーガチャッ


「あんたペットの尻を眺めながら何言ってんだい」


おちりを見上げて油断してたらまさかの乱入者。


決してやましい事など何も無いので言い返す。


「あ、ちょ!放鳥中は扉開けないでよ!ちゃんと扉の前に『部屋んぽ中』って掛けておいたでしょ!?ピー助と月見してるんだから邪魔しないでよ」


窓から見えるのは見事な満月。


ピー助のおちりと並べると風流を通り越して芸術の域だね(謎)


「ピー助と、じゃなくピー助で月見してるの間違いでしょ。あと窓とか扉は全部閉めてるの確認したわ。それにピー助は放鳥してる時基本的にリモコンの横から動かないでしょ」


「たまには膝の上とか頭の上に来るし!」


「フンしに来てるだけでしょ」


確かにそうだけど!


あれは私に運を付けてくれる、言わばご褒美だからセーフ!


「ポー」


ぎゃーぎゃー言い争う人間達を尻目にゆったりのんびりリモコンに寄りかかりながら月を見上げるピー助。


ある意味人より風情と言うものを分かってるのかもしれない。


今日も月とおちりが素晴らしい。

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