28 テーマ:アドベンチャー

テーマ:アドベンチャー

- 主人公の過去:公式, 正位置

- 主人公の現在:慈愛, 正位置

- 援助者:善良, 逆位置

- 主人公の近い未来:知恵, 逆位置

- 敵対者:調和, 逆位置

- 結末:庇護, 正位置


 主人公とその息子に、夫からの救援依頼が届く。

 なんでも、夫は魔物の巣窟となっている地下の大迷宮に単身で飛び込んだものの、帰れなくなったようだった。

 事前に申請していた期間期限を3ヶ月以上も過ぎてしまったため、救援依頼が自動的に主人公の元へと送られてきたようだ。

 夫は冒険者にしては生真面目にギルドへの報告などは怠らない人だったので、救援依頼が送られてきたということは、本当に危険な状態になってしまったのだろう。

 そう判断したものの主人公は、生意気盛りの息子がいるため、救援に向かう決心がついていなかった。


 救援依頼が届いてから1週間、悶々とした気持ちを抱えていた主人公に、息子から助けに行こうと声がかかる。

 両親が冒険者であった息子は、当然のように冒険者にあこがれており、父親を捜すという大義名分も得たことなので、何度も主人公にせっつく。

 父親を捜したいのか、それとも冒険者へのあこがれなのか。

 どちらかわからないものの、その熱意に、しぶしぶながらも主人公は夫を探すことを決め、地下の大迷宮へと向かうことにした。


 夫が拠点にしていたギルドにて、捜索予定の階層をチェックし、生きて帰るための準備を行った後、主人公と息子は迷宮の奥深くへと向かう。

 階が深くなるごとに強く、賢しくなる魔物たちを、主人公と息子は息をひそめてやり過ごす。

 冒険者はおとぎ話の世界のように魔物を倒す人間ではなく、人間では到底勝てないような魔物たちを出し抜きながら宝を探す職業なのだ。

 しかし、そんな現実にまだ幼い主人公の息子はショックを受けてしまう。


 20層を超え、疲労が蓄積していく中、一息つけるスペースで休んでいると、主人公の息子が父親のものとみられる水筒を見つける。

 おそらく、この層で父は何かがあったのだろう。

 はやる気持ちを抑えられなかった息子は、主人公と分かれ、単独行動を始めてしまう。


 それに気づいた主人公がパニックになりながら、息子を探し始めると、ぼろぼろの夫を発見する。息も絶え絶えで意識を保っているのがやっとである彼は、早く大迷宮を脱出したいと主人公に伝える。

 主人公が息子を探す必要があると伝えると、主人公の夫はまず一度大迷宮を脱出して、再度装備を整えてから、息子を探そうと言い出す。

 主人公の夫は、

  「自分と冒険者であった主人公の二人であれば、もっと早くにこのフロアまで帰ってこれる」

  「このままであれば自分は死んでしまい、最悪息子も見つからないかもしれない」

  「息子は主人公の血を引いているから、実力がある」

 と、手を変え品を変えながら、主人公を説得しようとし続ける。

 夫の尋常じゃない姿に、主人公は気圧され、少し捜索して見つからなければ、脱出したほうが良いか、と考えるようになる。


 しかし、「息子は主人公の血を引いているから、実力がある」という部分に主人公は引っかかる。

 安全策を取るように、私がきつくしつけた彼はそんなことを言うだろうか?

 主人公はまるで霧が晴れたかのように思いなおし、夫に剣を向ける。


 始めは狼狽する夫だったが、主人公が剣を振り下ろすと、化けの皮がはがれる。

 実は、夫の死体に乗り移ったゴーストが、主人公たちを嵌めて、迷宮の奥深くへと誘おうとしていたのだった。

 正体が判明したゴーストは、途端に主人公に牙をむき始める。

 夫の記憶と身体を利用して繰り出される剣術は、一線を退いていた主人公には荷が重く、次第に劣勢になってしまう。


 あと一歩のところで主人公が殺されそうになった時、主人公の息子が隙を見て、ゴーストへと剣を突き立てる。

 その目は、かりそめの冒険者にあこがれていた時とは違い、生き抜くという強い意志を秘めた目であった。

 隙ができたゴーストに、主人公がとどめの一線を放つと、ゴーストは散り散りになってどこかへと消えていく。


 残ったのは、残酷に殺された夫の死体だけだった。

 必死に嗚咽をこらえなら、涙を流す主人公。だが息子は、ただ主人公の背中に手を当て続けるだけだった。

 主人公の涙が止まると、それがきっかけとなって、彼らは振り返らずにその場を後にした。


 迷宮からの帰りは予定よりも3日早かった。

 十日ぶりに浴びた太陽の光と、新鮮な空気は、主人公たちの心を癒してく。

 ふと、主人公の息子に涙が浮かぶ、少しずつそれは大きくなり、迷宮の奥まで聞こえるぐらいの叫びとなった。

 

 母と息子は、寄り添いながら、街へと帰った。

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