スキル複製で百人力
葦艸草生
一匹狼
今日も剣を振る。今日も魔法を使う。そんな毎日を繰り返す。
俺は冒険者のマスヒト。年齢はピチピチの20歳だ。ああそうだピチピチの青年である。
手前味噌で悪いが年齢の割にはかなり強い方でレベルは今49。同年代はちゃんと活動している人でも27~28。指数関数的にレベルが上がる毎に必要な経験値も増え、まあとにかく他人の二倍どころではなく五倍六倍は剣を振り、呪文を詠唱した。
実際レベルから考えたらピチピチの青二才である。
じゃあなぜこんなにレベルが高いかと言われたら色々あるのだが、一番は努力である。
他の人は活動場所を変えながら旅をしたり、家庭を持ったり、遊んだりしているが、自分はダンジョン以外に現を抜かすなんてことはなく、この街で活動し続けた。
素材の換金以外にギルドに向かうこともなく、ダンジョンの出入口付近にテントを張り、朝一番にダンジョンにはいるのだ。
色々工夫もしたが、考えるより剣、悩むより魔法である。
自分は年齢から考えれば強すぎる位だが、自分にはもう才能もある。それがスキルだ。
スキルは全員にあるわけではない、自分はどちらかと言えばマイノリティ側、選ばれし者なのだ。
俺は強い、強いのだが、剣も魔法も並みではある(どっちかしか使えない者がほとんどだけど)。
別に俺は嫌みで言ってるわけではないのだが、スキル持ちはこんなものではないのである。
俺にはスキルが使えない。使いこなせないのではなく使えない。普通はこんなことあり得ないのだが…
ピッチピチの少年マスヒト15歳の誕生日、成人になった日でもある。
その日の未明、俺はスキルを手にいれた。その時一人、少年は歓喜した。だが同時に軽く絶望もした。能力は《
彼は能力を使うことが出来ないのである。
こんなこと初めて聞いた。レベル制限のあるスキルだなんて。しかもこのスキルが確認されたのは彼が初めてらしい。
少年は戸惑った。周りの大人も戸惑った。国によって制度は違うのだがこの国ではスキル持ちは15歳から、スキルのない人は18歳から活動できる。周りも俺の扱いには頭を抱えたみたいだが彼は迷わず、その日のうちにダンジョンに向かった。「いざ50レベルの世界まで…スキル持ちの世界まで!」
それから毎日ダンジョンに潜っているのが俺だ。家には一年で一日帰る(同じ街だが)。基本はダンジョン、疲れたら入口付近にテント、素材の換金にギルド。この3つだけのものすごくシンプルな暮らしをしていた。
こんなに彩りのない生活をしているが、今日はスキルを手にした日以来の高揚感と共に敵を葬る。そして、人生で49度目の「アレ」の感覚を思い出す。
「前にレベルが上がったのはいつだったかな…半年以内ではあったはずだが。」
そんなことはどうでもいい、これは通過点。ゴール、いやスタートはここからなのだ。
そして俺は久々にステータスを開く。ここから俺達の冒険が始まる…!
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