声劇台本「三億事変」
雲依浮鳴
本編
三億事変
A:
B:
ー本編ー
A:なぁ、宝くじ当たったらどうする?
B:お金に変える
A:そうだなー、まずは換金だよな。それからは?
B:額による
A:額か、決めてなかったな。うーん10万くらいか
B:控えめだな!普通この話なら10億とか一等が当たったらって話だろ?
A:いや、普通当たらないし、現実味ないよそんな話
B:ないからいいんだろ?夢のある話しようよ
A:けど、結局夢を語っても現実とのギャップに虚しさを覚えるだけだよ
B:じゃあなんでこの話を始めたんだよ!
A:・・・
B:え、なに、なんで黙るの
A:取ったりしない?
B:え!なになに!何を?もしかして当たったのか?!10万!!
A:違うけど
B:違う?もっと上の金額ってことか?
A:取ったりしない?
B:人の物は取らないよ。
A:本当に?
B:本当だ。
A:本当に本当?
B:あぁ、約束する!
A:特別だからね
B:勿体ぶらないで話せよ
A:これなんだ・・・ミヤマクワガタ
B:ミヤマクワガタ・・・?
A:ミヤマクワガタ
B:ミヤマクワガタ?
A:うん、ミヤマクワガタ
B:うん、ミヤマクワガタ?
A:そう、ミヤマクワガタ
B:・・・ミヤマクワガタ?
A:さっきその辺を散歩してたら飛んできたんだ。初めてここに来た頃を思い出して感動しちゃった。
B:そう、そうか・・・ミヤマクワガタ?
A:あげないよ。僕が見つけたミヤマクワガタだからね。
B:いらないよ。君が見つけたミヤマクワガタ?
A:さっきからミヤマクワガタしか言わないけど、どうしたの?
B:いや、その、俺の知ってるミヤマクワガタじゃないなと思って
A:え?でもどっからどう見てもミヤマクワガタだよ
B:え?でもどっからどう見てもカブトムシだよね?
A:カブトムシ・・・?
B:カブトムシ
A:カブトムシ?
B:うん、カブトムシ
A:うん、カブトムシ?
B:そう、カブトムシ
A:・・・カブトムシ?
B:だって角が一本しかないじゃん。
A:そうだね
B:クワガタって角がハサミのように二本あるでしょ?
A:そうだね
B:でもこいつの角は
A:1本だね
B:じゃあカブトムシじゃないかな
A:けど、ミヤマクワガタだよ
B:ミヤマクワガタなの?
A:ミヤマクワガタだよ
B:ミヤマクワガタなんだ
A:ミヤマクワガタなんだよ
B:どこがミヤマクワガタなの?
A:名前がミヤマクワガタだよ
B:名前がミヤマクワガタなの?
A:そうだよ。
B:カブトムシだけど名前がミヤマクワガタなの?
A:カブトムシだけど、ミヤマクワガタって名前なの
B:カブトムシに命名したってこと?
A:命名したよ
B:今日から君はカブトムシだけどミヤマクワガタだ!って言ったの?
A:あぁ言ったよ。カブトムシだけどミヤマクワガタだって
B:そうか、ならこれはミヤマクワガタだ
A:え、ちがうよ
B:え?ちがうの?
A:これはカブトムシだよ
B:これはカブトムシだね。
A:そうカブトムシ
B:カブトムシだけど、ミヤマクワガタって名前だよね?
A:カブトムシなのに、ミヤマクワガタって名前なの?
B:え、君が、今日から君はカブトムシだけどミヤマクワガタだ!って
A:言ってないよ
B:え!じゃ誰が言ったの
A:君だよ
B:俺が言ったのかぁ
A:そう、君が言ったんだよ、ミヤマクワガタだけどカブトムシって
B:いってないよ。
A:え?じゃあ誰が言ったの
B:君だよ
A:そっか、じゃあこいつはミヤマクワガタだけどカブトムシか
B:違うよ。カブトムシだけどミヤマクワガタなんだよ
A:え?じゃあカブトムシだけどミヤマクワガタで、ミヤマクワガタだけどカブトムシってこと?
B:そうなるね
A:そうなってしまうのか
B:・・・ちなみにそれ、調べたら片角の折れたノコギリクワガタだった。
A:片角の折れたノコギリクワガタだったのか、通りで角は一本なのにクワガタに見えるわけだ。
B:俺もカブトムシ見たことないから、角が一本って事だけで判断しちゃったな
A:仕方ないよ。君は都会育ちだもんな
B:あぁ、自然に触れたことないな
A:触れてみたい?
B:そりゃ触れてみたいね
A:触れてみる?
B:触れれるのか?
A:はい
B:それは片角の折れたノコギリクワガタだろ?
A:けど自然だよ
B:片角の折れたノコギリクワガタなのに自然なのか?
A:そうだよ。片角の折れたノコギリクワガタなのに自然だよ
B:それは、名前が自然なのか?
A:その流れはもうやったよ
B:この流れはもうやったか
A:あ
B:あ
A:飛んでっちゃった
B:自然が飛んで行ったな
A:自然!元気でな~!
B:触りそびれたな、自然に
A:違うよ、自然じゃなくて片角の折れたノコギリクワガタだよ
B:その流れももうやったよ
A:この流れももうやったか
B:どうしよう話すことなくなったね
A:無くなったね
B:しりとりでもするか?
A:もう何回もやったよ
B:そっか、何回もやってたか
A:・・・リンゴ
B:五輪
A:「ん」ついたら負けだよ。
B:「ん」ついたら負けか。もう一回やろう
A:君からいいよ
B:リアクタンス
A:Ω(オーム)
B:間違ってはないけど、しりとりとしては違うよ
A:Xってこと?
B:それも間違ってないけど違うよ
A:Xc(ラージエックス、スモールシー)ってこと?
B:それだと、容量性リアクタンスになっちゃうね。
A:ってことはラージエックスとスモールエルか
B:誘導性だね。違うよ、「ス」だよ
A:水質汚濁防止法
B:うーん、なんか違うくない?
A:え、違うくないよ。1970年に公布されてるよ
B:施行されたのは1971年6月24日のやつだよね
A:知ってるんだ
B:知ってたよ
A:でもなんか違うの?
B:しりとりとしてはなんか違うくない?
A:そうかな?
B:そうだよ
A:しかたないなぁ、変えるよ
B:ありがとう。「ス」だよ
A:水道損壊及び閉塞罪
B:それもなんか違うくない?
A:違わないよ。知らないの?
B:知ってるよ。1年以上10年以下の懲役に処されるやつだよね
A:おぉ~
B:なんで次は法律関係なの
A:なんとなく
B:なんとなくか~
A:しりとり続ける?
B:もういいかな
A:そっか、じゃあ次はなにしようか
B:なぁ、宝くじ当たったらどうする?
A:お金に変える
B:そうだなー、まずは換金だよな。それからは?
A:額による
B:額か、決めてなかったな。うーん10万くらいか
A:控えめだな!普通この話なら10億とか一等が当たったらって話だろ?
B:いや、普通当たらないし、現実味ないよそんな話
A:ないからいいんだろ?夢のある話しようよ
B:けど、結局夢を語っても現実とのギャップに虚しさを覚えるだけだよ
A:じゃあなんでこの話を始めたんだよ!
B:・・・
A:え、なに、なんで黙るの
B:取ったりしない?
A:え!なになに!何を?もしかして当たったのか?!10万!!
B:違うけど
A:違う?もっと上の金額ってことか?
B:取ったりしない?
A:人の物は取らないよ。
B:本当に?
A:本当だ。
B:本当に本当?
A:あぁ、約束する!
B:特別だからね
A:勿体ぶらないで話せよ
B:実はね
A:実は
B:三億当たった
A:三億当たったんだ
B:そう、三億
A:三億か
B:そう、三・億・円☆!
A:・・・
B:反応薄いね
A:もっと驚くと思った?
B:もっと驚くと思った。
A:あ!ミヤマクワガタ!
B:え、どこどこ!
A:あそこに飛んでる!
B:どこに飛んでるの
A:見えないの?2㎞先だよ
B:2㎞先か、なら見えないな
A:えぇ折角見つけたのに
B:望遠鏡でも持ってくるんだったな
A:そうだね、持ってきたら良かったね
B:見たかったな、ミヤマクワガタ
A:さっきいたよ、ミヤマクワガタ
B:・・・三億あったらさ、何する?
A:三億か、何するんだろうな
B:なんでもできるね
A:なんでもできちゃうね
B:夢かなえられるかも
A:夢かなえちゃうか。
B:夢ってどんな夢
A:夢は見ないな
B:夢、見ないのか、現実とのギャップに虚しさ覚えるもんね
A:現実とのギャップに虚しさ覚えちゃうからね~。君の夢は?
B:夢か・・・。自然に触れてみたい
A:自然に触れてみたいか、三億でできるかな
B:三億でできるよ。
A:何ができるの
B:無人島、買った
A:初めて聞いた時はビックリしたよ。今でも正気を疑ってる
B:でもこうして、無人島でのんびり過ごせている。
A:都会じゃ経験できないな~
B:都会じゃ経験できないよ~
A:夢かなえられた?
B:まだ、触れられてない。
A:三億じゃ夢かなえるの難しいか
B:難しいね。
A:三億で買えばよかったねカブトムシ
B:そうだね、無人島よりカブトムシを買えば良かった。
A:どうして無人島を買ったの
B:無人島を買えばカブトムシ取り放題って思って
A:カブトムシ取り放題か
B:そう取り放題
A:取り放題?
B:一匹もいない
A:夢と現実のギャップだね
B:虚しくなんか・・・ない!
A:でも本当は
B:すっごく虚しい
A:泣いていいよ
B:泣かないよ
A:もう泣いてるよ
B:まだ泣いてないよ!
A:これからどうなるんだろう
B:どうなるんだろうね
A:見つけて貰えるかな
B:どうだろうね、無人島だしね
A:やっぱり難しいかぁ
B:ガソリン足りなくなる何て思わなかったね
A:初めてだから仕方ないよ
B:そうだね。予備を積んどけばよかったね
A:忘れてたね。無人島に行くって盛り上がってたもんね
B:ワールドカップ並みに盛り上がってたね
A:盛り上がり過ぎて手ぶらで来たもんね
B:そうだね、気づいたら無人島ではしゃいでたね
A:これからどうしようか
B:どうしよう
A:ん?何か飛んでくる
B:本当だ、なんの虫だろうね
A:あ、カブトムシ!
B:え!カブトムシ?
A:今度こそカブトムシだよ!
B:嘘だ。どうせまた片角の折れたノコギリクワガタだよ
A:違うよカブトムシだよ!
B:違うよ、片角の折れたノコギリクワガタだよ
A:今度はちゃんとしたカブトムシだよ
B:これがちゃんとしたカブトムシなの?
A:そうカブトムシ
B:これがカブトムシ?
A:ほら、触りなよ
B:触っていいのかな
A:いいよ、自然に触れたかったんでしょ
B:自然に触れてみたかった
A:こんなチャンスもうないかも知れない
B:もうないのかこのチャンス
A:角も一本。カブトムシだよ
B:ノコギリクワガタも角一本だよ
A:違うよ、ノコギリクワガタは角二本だよ
B:さっきのノコギリクワガタは一本だった
A:さっきのは片角折れてたよ
B:そっか片角折れてたのか
A:うん、片角折れてたよ
B:うーん、これがカブトムシ?
A:そこまで疑うなら携帯で調べなよ
B:そうする
A:どうだった?
B:本当だ!カブトムシだ!!
A:でしょう、カブトムシだよ
B:逃げる前に触らないと!
A:そうだよ、逃げる前に触らないと!
B:いくよ、触るよ、触っちゃうよ!
A:おぉ~
B:おぉ~
A:どう?
B:夏って感じだね
A:夏って感じか
B:あ!夏が飛んで行った
A:夏が飛んでいったね
B:夏!元気でな~!
A:元気だね~
B:なぁなぁ、俺自然に触れられたかな
A:自然に触れてたね。夏だったけど
B:夏も自然の一部だよ!
A:確かにそうだ!
B:やったー!!!
A:夢かなったね
B:嬉しい!
A:良かったね
B:ふうー!これからどうしよう
A:記念に写真でも撮る?
B:そういえば一枚も撮ってなかったね
A:ずっとカブトムシ探してて撮ってないね
B:撮るよ~、3・2・1・・・
A:どう?
B:二人とも疲れた顔してる
A:してるね
B:もう3日か
A:正確には4日だね
B:え、もう4日?
A:ミヤマクワガタの下りの時に日付超えたよ
B:気づかなかった
A:気づいてなかったね
B:気づけなかった
A:気づいてほしいね
B:気づいてほしい?
A:そう、気づいてほしい
B:何に気づいてほしい?
A:何だろうね
B:何だろうか?
A:・・・
B:あ!わかった!さっきのは片角の折れたミヤマクワガタだった?
A:違うね~
B:じゃあなんだ?
A:118
B:海上保安庁の緊急通報だね
A:知ってるんだ
B:知ってるよ。この場合、俺たちは遭難なのかな
A:遭難になるんじゃないかな
B:連絡入れれたらなぁ
A:入れられるよ
B:嘘だ、入れられないよ
A:本当。入れられるよ
B:どうやって?
A:・・・携帯
B:携帯があったら苦労してないよ
A:そうだね
B:夢と現実のギャップだな
A:携帯あるよ
B:またまた、夢を見すぎるのは良くないよ
A:カブトムシ調べてた
B:カブトムシ?
A:一緒に写真も撮った
B:撮ったね
A:・・・
B:・・・
A:帰れるかな
B:帰れるよ
A:どうやって?
B:いずれ見つけて貰えると思うよ
A:誰に
B:海上保安庁の方々に
A:海上保安庁の方々に?
B:連絡は入れてるから時間の問題かな
A:そっか~、連絡入れてたのか
B:連絡入れてたよ
A:いつ?
B:君が宝くじの話する前かな
A:そっか、気づかなかった
B:気づいてなかったね
A:気づいてなかった
B:あ!カブトムシ!
A:また見つけたね、カブトムシ
B:自然だね
A:自然だね
ー終わりー
声劇台本「三億事変」 雲依浮鳴 @nato13692
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