入れ替わった人生
本庄 楠 (ほんじょう くすのき)
第一話 出産
第2話 家族会議
話し合いは育代が退院した翌日の二十一日に行われた。
場所は野中家の八畳の座敷であった。鹿児島からは育代の父親の田尻公夫、母親の幸代の二人が出席した。野中家は昇の両親、つまり、野中光男と妻の妙子、そして育代本人の三人である。
初めに子供たちの名前の相談から始めた。子供たちの名前は入院中に育代が考えていた名前を披露したのである。それは、太(ふとし)、平(たいら)、洋(ひろし)であった。三人合わせて太平洋(たいへいよう)としたいと皆に自分の考えを提案したのであった。
誰も反対せずにあっさりと、この件は決まった。育代の両親は
「なかなかユニ-クで面白いじゃないか!」と微笑みながら頷いていた。野中家のふたりは特別にコメントしなかった。かくして、後から生まれた順番に、太、平、洋と三つ子の名前は決定したのだった。
そして、ここから先が話し合いの本番であった。三つ子を今後、誰がどのようにして養育していくかである。
普通の発想であれば育代が野中家で三人の子を育てると言うことになるであろう。それは、この場に参加した全員が考えた事であった。しかし、育代は夫を亡くして、今は一人である。しかも、子供は三人である。また、産後の肥立ちも悪く、とても無理であろうとは、これも出席者全員が危惧したことであった。
協議の結果、決定したのは、長男(最後に生まれた太)は育代が野中家で養育する。次男の平は育代の両親が引き取って養育する。三男の洋は昇の妹夫婦が引き取る事になったのである。昇の妹夫婦には子供が居なかった。それで、甥っ子を喜んで養子にしたのである。これは母親の妙子の要望を娘夫婦が受け入れて呉れた結果であった。事前に妙子は娘の八重子の旦那さんである池田民雄さんの承諾を得ていたのであった。
かくして、長男の太は野中太に、次男の平は外祖父母の姓の田尻平に、三男の洋は昇の妹夫婦である池田洋として、三人三様に苗字が違う、別々の家族の下で養育されることになったのである。
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