第40話
火打石にならなかった魔石と、虫眼鏡にならなかった鑑定眼鏡をポシェットにしまう。
「ってことは、火をおこすには摩擦熱しかないかぁ……!」
木の板と木の棒がいるね。あと火種を作るときに枯れ葉とか……。
ポシェットの中に手を突っ込む。
棒がほしい。長さが3,40センチくらいの両手で挟んでコロコロしやすそうな滑らかに丸くて直径1~2センチの、なんか出てこい!
手に触れた。
「出た!」
まさに理想的な棒。
……なんで、棒が入ってるの?
首を傾げる。
……勇樹も火起こし配信とかしてたのかな?なら、木の板とかも入ってる?
木の板出てこい木の板……うーんと、かまぼこの板みたいな大きさでもいいよ。
出てきた。明らかにポシェットの入り口からどやったらで入りできるのか分からないサイズの板。
「でかいな……」
背中くらいの大きさがある板だ。
「かまぼこの板サイズって……そうか。ちっちゃいダンジョン……ダンジョロイドは猫サイズだから、かまぼこの板もこんな盾みたいに大きくなるんだね……」
ま、いっか。じゃ、板を追いて、ちょうどなんか焼け焦げた黒いぽっちがある。きっとここで勇樹も火をおこしたんだね。
そこに……。
そう、枯れ葉。もしくは糸くず。ほこり。
乾燥した樹皮を割いたものとかでもいいんだよね。なんか火がつきやすいものでてこーい。
ポシェットの中に手を突っ込むと、なんか綿みたいなふわふわとしたものがいっぱい出てきた。
少しだけ千切ってあとはポシェットの中に戻す。
さ、これであとは……。
棒を両手で挟んでぐりぐりぐりぐりぐりっ!前後にスライドさせて回す、回す、回すっ。
うりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃ。
はぁ、はぁ、はぁ。
回す、回す、回す、回す……。
はぁ、はぁ、はぁ。
え、これ、どれくらい続ければいいんだろう?
というか、板の穴から煙が?
あれ?めちゃくちゃ早くない?
あ、そう言えば、何かで見たことあるよ。摩擦熱って、速さも大切だけど、押し付ける力が強い方がいいって。
そっか、このダンジョロイド、私よりも力持ちなんだ。だから、こんなに早く煙が……。
おっと、綿、綿。
もうちょっとだ。、うりゃうりゃうりゃうりゃ。
「やったー!火がついた!」
って違う、火がついたじゃない。消えちゃう消えちゃう。
枝を組んだところにポイっと投入。細い枝から……。
あれ?
必死に火起こししてたから周りを気にしてなかったけど、森が近い?
10メートルくらい森までなかったっけ?5メートルくらいに見える……まるで森が迫ってきているような?
ってそんなことないか。
「消えちゃう、気のせいで手を止めてる場合じゃないよっ!ふーふーふー」
あ、口でフーフーとかじゃなくて、綿、さっきの綿みたいなの追加!
消えそうになった火に綿を追加してふーふーふー。
枝に燃えうつれ、うつれ。
『馬鹿が、凝りもせず我らが燃えるわけなかろう』
『生意気な犬ころがいない間に、始末してやる』
なんだか、すごくざわざわと葉がすれる音が聞こえる。
風でも出てきた?
ぱっと振り返ると、森っ。
いや、木っ!
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