第26話 やっぱり筋肉はすべてを……

 日本時間で夜8時になった。そろそろ義姉ちゃんが夕飯も食べ終わりログインする時間だろう。

 こちら時間では午前7時。コクピットの設定も終わり、ひと眠りして起きたところだ。

「ああ、行動制限か……。ギルドが動いたのか、誰かがギルドを動かしたのか」

 富士山麓ダンジョンは4時間ほど前から入場規制が行われ、新しくダンジョンにダンジョロイドを入れることができなくなっていた。すでに入っているダンジョロイドについても、行動できる時間は、2日1時間となり、完全入れ替え制のようになっている。いち早く動いていたダンジョロイドはすでに1時間は使っているため、今は閑散としていた。

 こりゃラッキーだな。

 すでにダンジョロイドをダンジョンに運び込んであり、まだ1度も動かしてない者だけが今は行動できるわけだ。20体ほどまで数が減っている。

 ……とはいえ、動ける時間はたったの1時間だ。情報をよく集めてからの方がいいだろう。

「あ、義姉ちゃんの配信が始まった!」

【おおお!マインちゃん!】

 カメラ目線で手を振ってニコニコしてる。

【ぐおっ、おいらを見て手を振ってくれた】

 違う、見てるのはカメラだ。

【っていうか、今までこんなサービスしてくれたことあったか?】

 ……してないな。アイドルダンジョロイドの配信じゃないんだ。こっぱづかしくてできるかよ。

 それに、義姉ちゃんが男に愛想を振りまくなんて。

 っていうか、一体なんでカメラを見て手を振ったんだ?

 2階層へと続く階段を下りていく。

 進むのか!2階は何があるかわからない、危険だっ!っていっても1階への出入り口消えちゃったから仕方がないのか?

 レベル999あれば問題はないとは思うけれど……。

 でもなぁ、義姉ちゃん怖がりだし、アンデット系モンスターが出る場所だったりしたら……。

 あと、虫も嫌いだからなぁ、巨大な虫系モンスターが出るような場所だったら……。

 ああ、もうっ!俺がその場にいれば「大丈夫だ」ってすべてやっつけてやるのに!

 筋トレしながら配信を見る。

 ダンジョロイドはVRスーツを着た人間の動きをトレースする。多少は補正されるものの、動かす人の能力で差が出る。引きこもって体を動かしたことがない人間とマラソン選手がダンジョロイドを走らせるのでは違うというので分かるだろうか?

 昨日の義姉ちゃん……飛んで休憩してを繰り返してたもんなぁ。挙句に、足に来て転んでた。

 かわいい。俺なら続けてジャンプなんてへでもないが……。

 まず、頭を天井にぶつけるなんてミスはしないしなぁ……。でも、それがあったおかげで……うーん。

 なんだか、今日の義姉ちゃんも何かをやらかすような不安が胸をよぎる。

 ああ、草原ダンジョンが珍しいのか。

 そりゃ洞窟のイメージ強いもんな、ダンジョン。

 びっくりして立ち止まっている。空を確認するためか見上げている。それから今度は……きょろきょろとし始めた。

 うん、義姉ちゃん、旅行に行ったら、完全にお上りさんだってばれてカモられるタイプの人間だ。一人で見知らぬ土地に行かないように釘を刺さなくちゃな。

【はぁー、今日もマインちゃんかわいいなぁ】

【ここが富士山麓ダンジョンの幻の2階層か】

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