第19話 許可をください、許可を!

『ぬ?すまんすまん。ちょっと大きな声を出しすぎたか』

『お姉ちゃんはそういうところがだめなの』

『あたちにちょうだい?あたちにそれ』

 二つの頭がワンワンと向かい合って吠えている。

 残りの一つが私に頭を差し出してきた。

「はい、どうぞ」

 首飾りをかける。

 黒くてつやつやな首に、真っ白な花の首飾り。頭にはピンクの花冠。

「まぁ!なんてかわいいのかしら!似合うわ!最高よ!」

『抜け駆けなのじゃ!』

『私にも作って!』

 ワンワンと、他の二つの頭が吠えている。

「欲しいの?待ってて。すぐに作るからね」

 せっせとシロツメクサを摘んでは編んでいく。

「できた。あなたには花冠、そしてあなたには首飾りね」

 素直に頭を出して首飾りも花冠もつけさせてくれた。

 あら……?これはもしかして、撫でてもいいのかな?

「みんなとってもかわいいわ!」

『あたちがいちばん』

『何を言う、妾じゃ』

『私でしょ?一番は私よね?そうでしょ、人間!』

 ワンワンキャンキャンとまるでおしゃべりしているように吠え続けている。

「何を言っているのか分からないわ……。言葉が分かればいいのに……。もしかして、気に入ったわ、かわいいでしょ、あなたもかわいいわよって言ってるのかな?えへへ、気に入ってくれてありがとう」

『ぬ?もしかして言葉が通じぬのか?妾が一番かわいいと言わないと思っていたらそういうことなのか?』

『あ、そうだ、私、契約しちゃおうっと。人間さん、契約しよう?』

『あたちもあたちも』

『妾もじゃ。かわいいともっと褒めると言うのなら契約してやろう。他の人間どもは妾たちを見ると悲鳴を上げるか攻撃してくかのどちらかじゃ。このようにかわいいといって花飾りまでくれたのはお主が初めてじゃ』

『とてもきれいな花飾り、嬉しい』

『にんげん、あたちとおともだちけいやくする?』

 左の子……な、なんと、私の手に顔をすりすりとしてきた。

 うわーん、かわいい、かわいすぎる。

 犬種で言えば、イタリアン・コルソ・ドッグなのかな?魔物に犬種っていうのもおかしいかな?

 左の子はお目目が一番くりんくりんしてる。大型犬で闘犬で怖いイメージあるけど、全然怖くない。ちょっと舌がだらしなく出てるところもかわいすぎるっ。

『また抜け駆け!』

 今度は右の子が私の右手に顔を摺り寄せてきた。

 この子は耳の先がへにょんとたれてて、目が少し寄り目。愛嬌がある顔をしていて、またまたすごぉくかわいい!

『妾と契約するのじゃ!』

 今度は真ん中の子が私のお腹に顔を摺り寄せてきた。

 うわーん、我慢たまらんっ!

 先に謝っとこう。

 ごめん、勇樹。もし、魔物が急に豹変して攻撃受けてちょっぴりダメージ食らったら許して。だって、こんなの我慢できないよ。犬犬パラダイスっ。もふもふせずしてどうしろと?

 ほ、ほら、現実でも、嫌がる猫を撫でまわして引っかかれたりしちゃうことあるよね?それと一緒、うん、そう、仕方がないのだ……。

「撫でてもいい?えへ、あなたは美人さんのお顔ね、もちろんかわいくて美人」

『うむ、そうなのじゃ。妾はかわいくて美人なのじゃ。よくわかっておる。撫でてもよいぞ、撫でるがよい』

 顔を一段と突き出された。

 これは、撫でてもいいってことだよね?

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