第3話〰夢の覚め方を教えてくれ〰
全く眠った気がしないが、時計は午前7時半。
雨風が凄いようで、窓に時々強く打ち付けられている。
もう眠気はなく、いつもよりスッキリとした目覚めだった。前胸部と右人差し指の疼痛はちょっとだけ軽減した。ただ寒さは相変わらずで、布団をかぶっていても肌寒い感じがする。衣替えの季節か……
起きるために右腕でかかっている布団をめくった。その時の自分の腕が見えなかった。
(………!!!!!!!!!!)
両腕も、ズボンから出ているはずの足先も透明だった。慌てて起きて全身を見るが、着ている服以外は全て透明。ガラスみたいな透明じゃなくて、空気と同じ透明。
(じゃあさっきのは夢じゃない……現実!?)
空想科学によくある、本物の透明人間になった……のか?
顔を引っぱたく必要すらなく、数ヶ所の疼痛は続いている。これは夢じゃない。
…犯罪だが、しかし全人類男子のドリームである女湯でのムフフなこと、無賃乗車、はたまた高級料理のつまみ食い……
それができるってこと!?
(あ、でも仕事とかどうしよう……この状態じゃ絶対出勤出来ない…。)
そう、今後のことをどうするか考えないといけない。
でもまず今すべきことはもう、考えるまでもなく決まっている。
服を脱いでみよう。クソ寒いが。
だが、ここで俺はもう1つの重大な事に気づかされてしまう。
「とりあえず服を脱い……あれ?」
俺のたった今思ったことが、結構かわいい女子の声で聞こえたのである。
驚いて辺りを見渡すが、俺も含めて誰もいない。
(まさか、俺以外にも透明人間が!?)
こんな身体なだけでも十分ヤバいのに、身近に知らない人がいたらもっとヤバい!!
すぐにTシャツを脱ぎ捨て、勇気を振り絞って声をかける。
「誰かいんの……!!!!」
そう声を出して、ようやく理解した。さっきの声は、他ならぬ俺だ。
そんな、と震えながらも、現実を認めたくなくてそっと左胸辺りに自身の手を伸ばす。
…………。
ああ……まあ心地よい弾力ですこと。右胸も同じ。明らかに胸を強く打って腫れたものではない。Bくらい?Eくらい?そんなサイズなんて知らんよ。
片手から少しこぼれそうなくらいの実りがそこに2個付いていた。見えないが。
そりゃあ勢いよく布団ダイブしたら痛いわ。あれは裏声じゃなくて、地声だった。
自分の宝物も触って確認しようとしたが、消息不明。マイ・リトル・ボーイの捜索願を出さなくては。言ってる場合か。
「女性の透明人間になった…」
透明人間になるだけでも十分驚きだが、一緒に女体化までしているとは……もうこれはフィクションの世界だ。そう言って欲しい。
なんか頭まで痛くなってきた……
でもまずは自分が置かれている状況を知ろう。
正直患者さんの急変対応よりパニックになっているが、まず大切なのは情報収集だ。
つづく
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