浸ってたい

ちゃしえ

第1話

朝。


ベッドから起き上がって伸びをする。


コーヒーの匂いで、調しらべが来ているとわかった。調は、気が向いたらわたしの家に来て、朝食を用意してくれる。


パジャマを着替えて、同じ階にあるリビングへ向かう。どうやらもう調はいない。


頂きます、と手を合わせ、コーヒーを一口飲んだ。クロックムッシュはまだ温かかった。


歯磨きをして、簡単なメイクをする。メイクといっても、ファンデーションとアイブロウだけ。アイメイクは面倒だから、出掛けるときにしかしない。それでも、顔を合わせると調は、可愛い、と言ってくれる。

そう言えば、

「今度はどこに行ったんだろ」

独り言。


調はしょっちゅう旅行に行く。国内でも、海外でも。

一度気になりだした所には、足を運ばないと気がすまないらしい。わたしとは真逆。猛烈に行きたいと思ったところでも、一週間くらいしたら忘れてしまう。熱量の問題だ。


ただ、お互い違うところで違うことをしていても大丈夫なわたしたちは、殆ど会うことはない。だから、調が帰ってきて、タイミングよく居合わせたら何をしよう、といつも考える。


調が好きなハンドクリーム、あれなにの香りだっけ。バニラかローズだったような。あ、あと、隣の駅に新しくできた雑貨屋のマグカップ、ほしいって言ってたな。


気がつけば、調のことで頭がいっぱいだ。こんな幸せが続いたらいいなと、ふと思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

浸ってたい ちゃしえ @nori-tama55

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ